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第12話

「呼び出しに応じるなっつったばっかじゃねーか」  親衛隊員が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。  ピアスをたくさんつけた彼は、眉根を寄せて舌打ちをする。 「お前さぁ、ほんと、ひとりで行動するのやめてくんね?」 「だって、教室にいるとアレが突撃してくるんだもん」 「モサ男がもんとか言うな。だから、ひとりでどっかこっか行くんじゃなくて、オレに声かけろって言ってんの」  ぱちくりと、目を瞬かせた。  とっつきにくそうな見た目のわりに、面倒見が良いのは風紀委員長からお世話を命じられただけではないだろう。  人は見かけに寄らず、とよく言うが、クラスで一匹狼の彼がなんだか意外だった。 「柚子原君は優しいね」 「はぁ!? なにトチ狂ったこと言ったんだ。ほら、さっさと飯食いに行くぞ」  氷織の前の席の柚子原とつるむようになってから、余計なちょっかいは減った気がする。靴を隠されたり、教科書類が切り刻まれるような事態には陥っていない。  愛優が突撃してきても、ひと睨みすれば半泣きで退散していく。とっても良い虫除けだ。 「どっか行くならオレに声かけてから行け。わかったな」 「トイレ行くときも?」 「トイレ、は……いや、声かけてけ」  舌打ちをしたり、ぼやく回数は多いけどなんだかんだで世話を焼いてくれる。  風紀委員でありながらピアスは良いのか、と聞けば風紀委員長はそこらへんは甘いらしい。自己責任、とだけ返ってきた。  しばらくは柚子原と行動する、と外﨑たちトリオに告げれば、微妙な反応が返ってきた。  早水はきょどきょどと忙しなく目線をさ迷わせ、立花はあからさまに口をへの字に曲げた。  あまり仲良くないんだろうか。 「お前、なんでそう呼び出されたらホイホイついて行くんだよ」  なんで、と言われても、呼ばれたから着いて行っているだけだ。  断る理由もないし、呼び出しを受けてもきゃんきゃんと男子にしては甲高い声で喚かれるだけ。  このときはまだ、親衛隊の怖さを理解していなかった。  

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