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第三章・9

 ドアを開けると、穏やかな匂いの香が焚かれていた。  優希の好きな香りだ。    ローテーブルには、冷たい飲み物と軽食が準備してある。  湯上りで喉が渇いていたので一口飲み物をいただくと、優希は奥の寝室へ向ってみた。    おそらく、ほどなくして談笑をしに要人が訪ねてくるだろうから、ただちょっとだけ覗いてみるつもりで、そんな気軽さで寝室のドアを開けた。すると。 「やぁ、優希。思ったより早かったな」  要人がベッドに横になっている!  これには少し驚いた。  ただ、やけにニヨニヨして自分の隣をぽんぽんと叩いてみせる要人に、優希は軽く笑った。  子どもの頃は、宿舎の消灯時間を過ぎても二人でこっそりベッドの中でゲームをして遊んだりしたっけ。  そんな風に考えながら、無防備に要人の隣に滑り込んだ。すると。 「優希……」  要人が速攻押し倒してきた!

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