28 / 127

第三章・12

 なぜか爽やかでポップなインストゥルメンタルが流れ、二人の若者が海辺で手をつないで歩いている。  さざ波の砂浜を歩き、時に顔を見合わせて笑いあっている。  超、というわけではないが、まぁ10人並みのイケメン。  一人は短髪で焼けた肌に髭を生やしていて、もう一人は色白でまだ少年の面影を残している。 「この髭男、要人に似てないか?」 「よしてくれ。髭が同じなだけだ」  くすくす笑いながら動画を続けて観ていると、急に画面が変わり芝生にタオルを敷いて、二人が濃厚なキスを交わしている。  濡れた音が響き、息遣いまで鮮明に録音してある。  ようやく本編が始まったのだ。  キスをする間もカメラアングルは細かく替わり、様々な角度から様子がうかがえるようにしてあった。

ともだちにシェアしよう!