44 / 127
第四章・6
昼、混雑する食堂へ要人が姿を現すと、優希が手を挙げ席を知らせてきた。
一人分の食事をトレイに準備し、要人は優希の向かいへ座った。
「お待たせ。遅くなって、ごめん」
「いや、いいんだ」
二人しかいないのに、なぜか4人掛けの席についている優希。
そして、空いている優希の隣にはバッグが置いてある。
(いつもならロッカーに入れておくはずなのに)
不思議に思った要人は尋ねてみようとしたが、先に優希の方が話しかけてきた。
「あの、さ。朝の、バレンタインデーのことだけど」
あぁ、と要人はパンをちぎりながら苦笑交じりに応えた。
「立場的に、ちょっとまずかったかな。生徒会長ともあろうものが、バレンタイン商戦に乗っかっちゃうなんて」
午後の役員会議では、おそらく議題の一つに上がるに違いない。
生徒の間におけるバレンタインデーの普及率とその弊害について、とかなんとか大仰な事を言って。
ともだちにシェアしよう!