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第四章・12
「ちょっと待って、優希! 頼むから、返さないでくれる!?」
いくら自分だけプレゼントを貰うのは悪いからと気に病んでいるとしても、突きかえすことはないだろう!
しかし、要人の前に差し出された赤い箱は、きちんと包装してあるまだ未開封の新しいものだった。
「え。これって……」
「ごめん、要人。実は僕も、君にプレゼントを準備してたんだ」
いつ出そうか、いつ渡そうか、ここで渡そうかとタイミングを伺ってはいたものの、なかなか言い出すことができずに、今に至ってしまったという。
「そんな……」
要人は、ぷっと吹きだした。
妙に気をまわしてバレンタインの話題から優希を遠ざけていたことが、実は余計なお世話だったとは!
「受け取ってくれるかな、要人」
「もちろんだ。ありがとう、優希」
部屋へ戻って箱を開けた要人は、その中身に顔をほころばせた。
ガラス製の天球儀を模したケースの中に、トリュフが数個入っている。
その一つを口の中で溶かしながら、今朝がた自分で喋った言葉を思い出していた。
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