75 / 127

第六章・3

「じゃあ、さ。ただ指すだけじゃつまんないから、何か賭けない?」 「金銭はダメだよ」  そんなもんじゃなくて、と要人は身を乗り出した。 「負けたら、勝った方のいう事を、何か一つだけきく」 「OK。いいよ」  では、と要人と優希は将棋盤に向き合った。  定石通りで丁寧な指し方の優希に対して、要人の将棋は自由奔放だった。 「何で、ここで歩を取らせるかなぁ」 「別にいいだろ。これが俺の攻め方なんだから」 「歩のない将棋は負け将棋、と言うよ」  そんな会話をしながら、ジュースを飲み、お菓子を食べながら、将棋を指した。 「あぁ、何か楽しいなぁ」 「小学生に戻ったみたいだな」  そうは言いながらも、心の中では負けん気一杯で、将棋を指した。

ともだちにシェアしよう!