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第六章・8

「はい、あ~ん」 「あ~ん」  ぱくり、と食べると、果汁が要人の口いっぱいに広がった。  酸味の少ない、甘い果汁がたっぷり溢れる。 「美味い!」 「それはよかった」  優希は、黙々とミカンの皮を剥き、まるで雛鳥のような仕草の要人の口に次々と果肉を運んでいった。  100の命令、一体どんなものになるかと構えていたが、まさかこんな事になろうとは。 「優希。優希、ちょっとストップ。口に入らない!」  もがもがと唇の端から果汁を流す要人の口の中はミカンでいっぱいで、喋ることがやっとの有様だ。 「あぁ、ごめん。つい、夢中になって」 「とっても美味しいから、優希も食べるといいよ」  そう言って、要人は腕を伸ばして優希の首をぐいと自分に近づけた。  驚く間もなく、そのまま唇が重ねられる。  口移しで与えられる、甘酸っぱい柑橘類の果汁。

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