102 / 127

第七章・21

  『筍ごはんをたくさん貰ったから、食べていかないか?』  そんな要人の誘いは、実に自然に優希へ届いた。 「山丘が試作品を俺にくれてさ。食べたら感想を聞かせて欲しい、って言うんだ」 「試作品? もしかして、まだ貝原と張り合ってるのか」 「うん。完璧な筍ごはんを作り上げて、文句なし美味い! って唸らせてみせるんだって」  山丘は、料理が趣味のクラスメートだ。  いろいろと珍しいものをこしらえては、彼女にまるで供物のように捧げている。  ところがそれに美食家の貝原が、一言物申してきたのだ。  彼女にプレゼントした弁当を脇から出てきて一口食べ、こんな事を言ってきた。 『確かに美味いが、火加減がいまいちだな。余熱を考えると、これは2分早くコンロから下ろすべきだった』

ともだちにシェアしよう!