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第七章・24

 そういえば貝原に山丘が、安くても旨いものはある、と言い張ってた事があったっけ。 「利き酒ができるほど、飲んだことないんだけどなぁ」 「このグラス一杯だけ。優希もワインくらいなら、飲めるようになってもいいんじゃないか?」  誕生日には、ハイクラスのワインを用意しておくから、との要人の言葉を嬉しく聞きながら、優希はゆっくりと一杯のワインを飲み進めていった。  そんな優希の様子を注意深く窺いながら、要人はワインを三杯飲んでいた。  食事を終えた頃には、いや、ワインを一杯干した頃には、優希はふわふわと良い心地になっていた。 「やっぱり、僕にはまだアルコールは早いみたいだ」 「はは。顔が少し赤くなってるぞ」  でも確かにおいしかった、と気分は悪くなさそうだ。  そこで要人は、一歩踏み込んでみた。 「そういう優希だって、ビール持って誘ってきたことあるじゃないか」 「あの時は……」

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