106 / 127

第七章・25

 そう。  要人と、せめてキスくらいできるようになろうと精一杯背伸びして、自分から飲酒に踏み切った時があった。  おかげでキスへの抵抗感は薄らいだものの、まだまだ恥ずかしいことには変わりない。  酔いの赤さに羞恥の熱が加わって、優希は無理やり話題を変えようと頑張った。 「要人は、ずいぶん慣れた感じだな。もしかして、晩酌とかしてる? おひとり様で」  ちょっぴりからかう響きでもって、そう問いかけた。  笑い話でうやむやにしてしまおう、と思ったのだ。 「ん~、時々飲むかな。一人でこっそり」 「オジサンみたいだよ、要人」  軽く笑って脱出を試みる優希だったが、ここは逃がさないぞと要人は軌道を戻す。 「だから、優希。君と一緒に飲めるようになりたいよ。おひとり様じゃあなくって、二人で楽しみたい」  予想外のリアクションだ。    返答に詰まった優希の隣へ、要人は移動した。  手には、ワインの瓶を持って。

ともだちにシェアしよう!