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第七章・25
そう。
要人と、せめてキスくらいできるようになろうと精一杯背伸びして、自分から飲酒に踏み切った時があった。
おかげでキスへの抵抗感は薄らいだものの、まだまだ恥ずかしいことには変わりない。
酔いの赤さに羞恥の熱が加わって、優希は無理やり話題を変えようと頑張った。
「要人は、ずいぶん慣れた感じだな。もしかして、晩酌とかしてる? おひとり様で」
ちょっぴりからかう響きでもって、そう問いかけた。
笑い話でうやむやにしてしまおう、と思ったのだ。
「ん~、時々飲むかな。一人でこっそり」
「オジサンみたいだよ、要人」
軽く笑って脱出を試みる優希だったが、ここは逃がさないぞと要人は軌道を戻す。
「だから、優希。君と一緒に飲めるようになりたいよ。おひとり様じゃあなくって、二人で楽しみたい」
予想外のリアクションだ。
返答に詰まった優希の隣へ、要人は移動した。
手には、ワインの瓶を持って。
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