110 / 127

第七章・29

 だけど、優希は。 「優希、何か香水とか付けてる?」  首を何度も甘噛みしながら、その合間に要人は訊いてみた。 「そ……、んな、物。付けない、よ」 「だろうね。良かった」 「なに……が、だよッ、て、いつまで噛んで……ッ」  ごめんごめん、と要人は優希から口を放し、彼の顔を確かめた。  耳まで赤くし、眼を潤ませ、唇を薄く開いて口呼吸をしているその姿。  Bの入口までたどり着いたぞ!  内心ガッツポーズを決めながらも、優希のプライドを損ねないよう自分の首筋を彼に差し出した。

ともだちにシェアしよう!