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マイナスから。②

俺はスマホの電話帳を開いた。 もう何年も会っていない男のページをタップし、その名前をなぞる。 一ノ瀬翔太(イチノセ ショウタ)。 俺の親友、だった男。 親友だったのはもう遠い昔のこと、 今は親友はおろか友人とすら呼べないのかもしれない。 高校を卒業してからすっかり疎遠になってしまった。 友情とは少しのすれ違いからいとも簡単に崩れていくものだと、今になって感じる。 高校時代。熟年夫婦だとか付き合っていないのが嘘だとか周りに言われていた俺と一ノ瀬だが、ある切っ掛けから仲違いをし、今に至る。 今思えば、あの時、素直に謝っていれば こんな風に疎遠になることも、後悔となることもなかったのに。 あの頃の俺たちは互いに意固地になっていた。 きっとこの連絡先だって変わっている。 今更何を、と自分に苦笑するが 近い将来死ぬという現実が待っていると解っていて、行動しないわけにもいかない。 俺がこうして後悔しているのは 何も、喧嘩別れしたからだけではない。 俺はこの親友だった男が 一ノ瀬翔太のことが好きだった。

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