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マイナスから。③
正確に言えば「好きだった」のではなく
今でも、好きだ。
無論、恋愛の意味で、だ。
親友として近くにいすぎた所為で
気づいたのは卒業が迫ってから。
当時は喧嘩もしていたし、まさかここまで拗れるとは思わずに胸に仕舞ったままだ。
もう遅すぎるかもしれない。
互いにいい歳だ。
向こうには家族がいるかもしれない。
けれど。
どうせ死ぬ身だ。
後悔は何一つ、残したくない。
あいつの特別になどなれなくていい。
もう一度、俺の親友として
せめて俺と笑顔を交わしてほしい。
どうせ死ぬなら、最期に思い出すのは
あいつの笑顔がいい。
恋人じゃなくていい、少しの欠片でいいから
あいつの記憶の片隅に俺がいればいい。
今まで悔いの残らないように生きてきた俺にとって
悔いと思うとのが一ノ瀬のことなんて
それだけで少しは生きられる気がした。
気がつけば俺はダメ元で一ノ瀬へメールを送っていた。
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