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初めまして。1
過労で倒れてから数日。
俺は念の為の入院を経て、無事退院した。
入院中、柳さんには無理をした事をとても説教された。
『お前は暫く会社出禁な。 それと、急に死んだら許さん!』
そう言った柳さんの声は少し、泣いていたように思う。
普段の柳さんからは想像出来ない姿だっただけに
俺はそれに従い、大人しく在宅ワークをしている。
因みに母は、見舞いには来たが宣告されたあの日以来、取り乱しはしなかった。
入院中の事を思い出し微笑う。
俺は悩んでいた。
一ノ瀬のことを考えないようにしたが為に
結果、仲間に迷惑をかけ、心配までさせてしまった。
こんなことでは、一ノ瀬のことだけではなく多くの後悔を残したまま死にゆくことになってしまう。
俺はどうするべきだろう……。
あれから一ノ瀬には会えずに連絡すらしていない。
もう、前に進むしかないと分かっている。
けれど……。
らしくなく、慎重になってしまう。いや、臆病になっている。
あいつとどうこうなりたい訳ではない。
もし、叶うなら
昔のように笑い合って最期は笑顔を胸に逝きたい。
もう一度、大学へ行こうか……。
考えた末に俺は、もう一度一ノ瀬の務める大学へ訪ねることにした。
連絡先は知っているが、それは一方的でしかも人づて。
今はまだ同級生に居たらしいくらいの知り合いでしかない。
一ノ瀬は俺を忘れている。
ならばこれを機に友達から始めればいい。
悔いを残さず死ぬ。
俺はそれのために、しっかりと向き合うと改めて決意した。
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