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初めまして。4
俺は前と同じ、食堂内のカフェで一ノ瀬を待つことにした。
時間的には昼前、以前と同じくらいの時間だが
またここで会えるとは限らない。
前は半分諦めていた時に偶然会うことができた。
あいつが学生の頃から変わらない癖に賭けてみた結果だ。
今日はどうだろう、毎日が同じとは限らない。
ここに来るかどうか保証もない。
けれど会える、そんな気がした。
食堂にはちらほら学生の姿が見られる。
俺は大学生になったことがないから分からんが
こういうのを見ると青春してんなーと思う。
そういう思考がもうアラサーのおっさんなのかもしれないな。
俺も高校生くらいの頃は大人たちの目にはそういう風に映ったのだろうか。
食堂でお喋りに花を咲かせる学生や課題だろうか何やらパソコンを持ち込んでそれとにらめっこしている学生、過ごし方は様々だがそんな風に好きにしている彼らが眩しくて、少し羨ましい。
その時間を過ぎた俺にはもう過ごせない時間。
願えども叶わない。
この先の未来を夢見て、進むことのできる彼らが羨ましい。
進むことは俺にも出来るが、現実として未来を拓くことがこんなにも難しい。
考え、悩み、学べ。
お前たちにはまだ、未来への可能性がある。
そうこうしているうちに午前中の講義が終わったのか
食堂は一気に人口密度が上がる。
若者たちを観察している間に飲み干してしまったコーヒーを俺は再度注文した。
前にも思ったがここのコーヒーは中々美味い。
ここの学生だったら、間違いなく毎日通っていただろう。
たまにお昼をここで過ごすのも悪くない。
そろそろ来るだろうか。
前はこのくらいの時間だと思ったんだが。
けれど、学生たちの姿が疎らになっても一ノ瀬は姿を見せなかった。
俺の勘は空振りだっただろうか。
腹、減ったな……。
コーヒーだけでは申し訳ないと思い
追加注文でカレーを注文した。
先程、学生が頼んでいた時から気になっていたのだ。
あくまで俺の個人的見解だが
カフェ、特にコーヒーの美味い店はカレーが美味い。
これでも食べながら待っているか。
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