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初めまして。5
カレーを食べ初めて30分ほど経っただろうか
俺がここへ来て1時間は過ぎた頃。
パタパタと足音が聞こえてきた。
「あー、やっと解放されたー。お腹空いたよー」
小柄な身体に白衣を着た一見学生と見間違える男。
けれど、俺は間違いようがない。
一ノ瀬翔太。
今日、俺の1番会いたい人物。
待っていて正解だった。
俺の勘も捨てたもんじゃない。
「んー、何にしようかな……。んー」
昼食を何にしようかと食堂と俺のいるカフェとを見比べているようだ。
何往復かしている間に俺と目が合った。
「あ、そこの人! 食べてるの、カレーですか?」
一ノ瀬の方からは俺の顔が見えないのか
確認しながら近づいてくる。
「ここのカレー、美味しいんだよな。よし、僕もカレーにしよ」
今のでメニューが決まったようでさっさとカウンターに行ってしまった。
あいつ、俺に気づいてないのか……?
数分後。
カレーを持ちながら俺の方へ戻ってくる。
「ここ、いいですか?」
「あ、あぁ」
席なら他にも空いてるのに
俺から話かける予定だったのに
これは有難い誤算だ。
しかしこいつ、すごい量を食うな。
一ノ瀬のカレーは俺の1.5倍はあろうかという量。
その身体の一体どこにこの量が入るというのか。
本当に美味そうに食べる姿を見て、思わず笑む。
そう言えばこいつ、高校の頃もめちゃくちゃ食ってたっけ。
一ノ瀬はその小柄な体格からは想像出来ないほど食べる。
昼休みにはパンを必ず3つは食べていたし、その前に
持参した弁当も食べている。
放課後になるとコンビニのホットスナックは当たり前で食べる時はラーメン屋に行ったりもした。
懐かしいなと思わず一ノ瀬をじ、っと見つめる。
すると俺の視線に気づいたのか
顔をあげ俺の方を見てきた。
その顔がカレーの所為なのか羞恥なのか
少し赤みを帯びていて、更に上気している。
「……あの、見すぎ、です。恥ずかしい」
………………。
可愛い。
「あ、あぁ、すまん、つい。よく食べるなーって」
「ん。 この身体によく入るなーって思ってません?」
一ノ瀬は眉を八の字に下げ、唇を尖らせ
怒っているんだか、困っているんだか、むくれているんだか分からない顔で俺を見る。
この顔も変わらないな。
昔、揶揄ったりするとよくこんな顔をしていたなと懐かしく思う。
クスクスと笑っていると
一ノ瀬は声を上げた。
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