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第5話

 熱に浮かされて、思考が溶けて来た……。  ユリウスは俺の胸元に、丁寧にキスを落としていく。柔らかな唇が触れる感触、強く吸われて痕を残される刺激が、甘く体に浸透する。 「ん……くっ……♡」  ドロドロに惚けた声が自分の口からこぼれる。俺は唇を噛んで、声を抑えようとするが―― 「伸太郎。口を噛むな。傷が付く」  目ざとい勇者様にすぐに見つかってしまい、唇に指を這わされた。 「ぐっ……うう……♡」  ちゅぷり♡ そのまま指をくわえこむ形になれば、細い指先が敏感な舌をさする。  ああ、駄目だ。今日は何をされても気持ちよくなってしまう。  相手にされるがままというのは落ち着かない。だから、普段ならここで攻守交代、フェラの1つでもしてやるんだが――今日は体の自由が利かない。ふにゃふにゃのとろとろになってしまって、ベッドの上に沈んでいる。 「はぁ……♡ はぁ……♡」  浅く呼吸をくり返している間に、ユリウスが俺のズボンに手をかけてくる。俺は抵抗らしい抵抗もできずに、さっと裸に剥かれてしまった。 「ダメだって……♡ やめろ♡ それ、はっ、本当に……ッ♡」  キスと愛撫でびんびんに勃ち上ってしまった、自分のちんこ。先走りでぬめぬめのそこを握られるだけでも恥ずかしいのに。ユリウスはあろうことか、それを口でくわえこんでしまう。温かな粘膜に包まれる感覚は、すさまじいほどの快感を伴っていた。 「あ♡ ああっ♡ ……んっ♡」  強すぎる快感のせいで、目の前がかすんでくる。くそ、涙まで出てきやがった。  じゅ♡ じゅ♡ と、強めに先端を吸われれば、下半身がきゅんと熱くなる。爆発的なほどの吐精感が沸き起こって来る。 「出るっ♡ もう出るからぁ♡」  口内に出してしまうことは気が咎め、俺はユリウスの頭を押しのけようとするが。手に力がまったく入らない。むしろ、優しく抱きしめてしまう形となってしまった。 「あ……、ああ♡」  きゅんきゅんと腹の下から突き抜けていく快感が膨れ上がり――頭の中が真っ白になる。全身がどろどろに溶けだしてしまいそうなほどの絶頂感だった。はー、はー、と乱れた呼吸が部屋に満ちる。  ごくりと嚥下する音が生々しく響く。俺が出した精液をご丁寧にユリウスが呑みこんでいる。その様をふやけた視界に収めた。目の端から涙がこぼれてシーツへと落ちる。  「伸太郎、気持ちよかったか?」  口元をぬぐいながら、ユリウスが尋ねる。  確かによかった。死んじまうんじゃないかってほどの快感だったよ。  だがな、それを素直に認めるのは悔しい。  俺は悔し紛れに叫んだ。 「どうせチートだろーがよ!」 「ああ。これは【フェラチオ】のスキル」 「おい、女神! スキル名考えるの、面倒くさくなってきただろ!?」  さっきから名前がそのまんまだぞ! それだけに【君だけの騎士】のスキル名が浮いてるぞ!?   俺は顔を背けて、ユリウスと目が合わないようにした。が、頬を両手で挟まれ、元の位置へ戻されてしまった。まっすぐな双眸が俺を見つめている。 「気持ちよくなってくれたみたいで、嬉しい」 「はあ? んなこと言ってねえだろ」 「伸太郎は照れ屋だからな。照れてる時はそうやって、言葉遣いが乱暴になる」 「なぁっ……」  かああ、と自分の頬が一気に熱くなるのがわかる。 「ココだって、もうこんなに濡れている」 「そんなわけねーだろ……って、マジかよ!」  女性器とちがって、男のそれが都合よく濡れるわけがない。だが、尻の窪みからは謎の粘性の液体がたらりと垂れている。ぐっしょりと濡れそぼって、いつでも準備万端♡といった状態になっていた。  やけにその辺りがむずむずするというか、ぬるっとしてて気持ち悪いと思ったら……って、何でだよ! 「スキル【淫乱化】の効果だな」 「くそっ、またスキルかよ! 転生チートとかずりーだろ!」  つーか、習得スキルが全部「性技」関連って、それ勇者って言うより、淫者じゃねえか。  女神様……どうしてこういうスキルが俺の役に立つとお思いになったのですか?  俺はユリウスから逃げようとする。が、全身に力が入らない。腰も脚もくたくた。それどころか、まるで「お好きに食べてください♡」とばかりに、あられもない格好で脚を開いてしまっていた。  ユリウスの手が俺の臀部をするりと撫でる。後孔に指を添えると、本来固く閉じているはずのそこは、つぷり♡と指をくわえこんでしまった。 「んっ……♡」  背中がぞくぞくとするほどの快感が駆けめぐる。普通は浅い所をさぐられても、異物感ばかりで何も感じない。なのに、俺の全身は血が沸き立って、歓喜を訴えるかのように震えてしまう。  本来は性感帯ではない箇所を探られてこんなに気持ちいいのだから、もっと深い場所――前立腺をいじられたらどうなる? 気持ちよさのあまり、脳みそぱーんと破裂しちまうんじゃないか?  まずい、まずい……! 頭の奥で警鐘が鳴る。これ以上、されたらまずい。頭がおかしくなっちまう。 「待て……ユリウス」  息も絶え絶えの中、俺はやっとの思いで告げた。 「これ以上は本当に……まずいって」  すると、ユリウスは少し迷ってから、しゅんと眉を下げた。しょんぼり顔もかわいいな、こいつ――じゃなくって! 「すまない……。伸太郎は俺とこうするのが嫌だったのだな」  親に叱られた子供のごとく肩を落として、指を引き抜こうとする。すると、きゅんきゅんとした切なさが俺の全身を襲って来て、 「だ、駄目♡」 「ん?」 「……え?」  俺たちは、はたと顔を見合わせた。  ユリウスが混乱しながら、お伺いを立ててくる。 「続けてもいいのか?」 「いや、だから……まずいって言ってるだろ」 「では、残念だが、中断しよう」 「そ、それも駄目♡」  ユリウスはきょとんとした顔をする。  わかる。「意味わかんねえ」って思ってるんだよな。俺もそうだよ! 「だああ、くそ! わかんねえ! 俺も自分で何言ってるかわかんねえ! でも、本当にまずいんだって。このままじゃ、俺、変になっちまうよ」 「伸太郎……大丈夫だ」  すっかり頭の容量(キャパ)オーバーを起こして、半ば錯乱している俺。ユリウスが手を握って来た。その暖かさで、いっぱいいっぱいだった頭が少しだけ落ち着く。 「君がどんなになっても、俺は君を愛してる」 「……う♡」  真摯な告白に胸がいっぱいになる――どころか、きゅんきゅんしまくって、苦しい。このまま心臓が爆散するのでは? と思ってしまうほどのときめきだ。  恐る恐る顔を上げてみれば、空色の双眸が俺をまっすぐに見ている。まるで眼差しだけで俺を優しく包みこもうとしてくれているかのように。 「ずっと君のことを待っていた。君が日本に帰って来て、入院となってしまったせいで、すぐに会いに行くことができなかった。退院後は行方がわからなくなって……でも、諦めたくなかった」 「うう……♡」 「どうしても君に会いたかった。こうして、ようやく会えたんだ」 「ううう……♡」 「もう二度と、伸太郎のことを手放したくない。離れたくない」 「だー!」  羞恥が限界を突破して、俺は叫んでしまっていた。メーター振り切れ、ぶっ壊れたよ! もう俺の中の「羞恥度」を測ることはできない。測定不能!  だから、今後は「恥ずかしい」とか「照れる」という言い訳はなしだ!

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