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第1話 DKとインキュバス・12

「わっ……!」  マットの上に押し倒された拍子に、頭に乗っていたマカロが転がって跳び箱の裏へと消えた。 「ほーたる……」 「う、……」  ステッカーの力が効かない天和は昨日と同じ獣の目で俺を見下ろし、笑っている。癖のある黒髪にそこだけは整った顔立ち、なのに悪魔的な歪んだ笑みと牙のような犬歯。  この世が地獄ならきっと、こいつは獄卒の一人だろう。だから夢魔の魔法が効かないんだ。 「たか、とも……」 「はあ……炎樽。やっとお前を俺の物にできる」 「か、勝手に決めるなっ……!」 「こんな反応してんのに?」  あ、と思った時には既に、天和の手が俺の股間を鷲掴みにしていた。強く圧迫するように揉まれて、そこから体中に強烈な刺激が走る。 「やっ、やだ……!」 「嬉しいぜ、炎樽。お前も俺にその気があるってことだもんなぁ」  天和は別に、俺じゃなくてもそういう相手が大勢いる。後輩なら来るもの拒まず状態だし、本気にされないと知っていて、それでもいいから抱かれたいという願望を抱く奴だっているのだ。放課後は毎日違う生徒とデートしていて、一部の生徒の間では「天和先輩と経験があるかどうか」が重要なステータスになっている。  究極の遊び人、究極の性欲の塊。むしろこいつこそが夢魔なんじゃないかと思えるほど、鬼堂天和は男好きで有名な奴だった。 「そんな緊張することねえよ、俺なら初貫通でも喘がしてやれる」 「や、ちょっと、ベルト……! 本当にやめて、脱がさないでっ……!」 「剥けてなくても笑わねえよ、安心しろ」 「マカぁっ!」  跳び箱の裏にかろうじて見えるマカロの目は相変わらずぐるぐるだ。肝心な時に何の役にも立たないこの夢魔に、俺は一体何の期待をしていたんだろう。 「やっ、……!」  今まで何千回とそうしてきたであろう超スピードで、天和の手が俺のベルトを抜き、ズボンを脱がし、最後の一枚である下着にかかる。  ──もう駄目だ! 「……炎樽?」 「え、……?」 「何だこれ。チンコに何貼ってんだよ、お前」 「あ、ええと、それは……」  緩く屹立した俺のそれに巻いてあるステッカーは既に半分剥がれかけている。天和は少し引いたような顔をして、まじまじとそれを見ていた。 「こういうのが好きなのか?」 「そういう訳じゃっ、……」  骨張った男らしい指がステッカーの端を摘まみ、ぴりぴりと少しずつ剥がされて行く。その度に形容し難い刺激が走り、ますます芯を硬くさせてしまう……

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