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第3話 秘密の土曜日・6

「炎樽。お前は今からやべぇくらいエロい奴になる。十年に一人の逸材って感じの、超絶どエロい、引くくらいの淫乱小僧になる」 「………」  咄嗟にでた言葉はそれだった。本当は俺への気持ちを確かめるために使うはずだったのに、炎樽の生脚を見ていたら無意識的にそんな言葉が出てしまっていた。断じて俺のせいではない。 「………」 「……なったか?」  水晶と俺を見ていた炎樽の目が、スっと細くなる。 「……何やってんだ、天和。そんなので遊ぶような齢じゃないだろ。……しかもエロい奴になるって、思春期の欲望丸出しじゃねえか」  軽蔑の視線を向けながら、炎樽が洗濯物の中から長いスエットを抜き出した。  相手にその気が少しでも無ければ効果はないとマカロが言っていた。ということは、炎樽にはエロい願望がないということなのか。 「それにしても天和がそんな子供っぽいことするなんて、何か可笑しいな」  ──いや、エロい願望がない男なんてこの世にいる訳がねえ。 「何か良いモン見せてもらったって感じ。だからさぁ、……」  手にしたスエットを放り投げ、炎樽が俺の胸元を指先で押した。その目は薄く半開きで、絡み付くように俺を見つめている。 「お礼に天和がして欲しいこと、何でもしてあげる」 「………」  最高じゃねえか、催眠術。 「──ん。天和の咥えるの、久しぶりかも。トイレでして以来だよな」 「……相変わらず下手クソだけど、堪んねえぜ炎樽。エロい顔、撫で回してキスしてえぐらい可愛い」  ソファで眠るマカロの横に座り、土曜の昼間から堂々と炎樽に奉仕させる俺。まるで王になったような気分だ。 「へへ。俺、可愛いなんて言われたの初めてだ。天和、……嬉しい」  催眠下では嘘がつけないと聞いたことがある。それなら今の炎樽は全て本音で俺と話しているということなんだろうか。  ──俺のこと、どう思ってる。  聞けばすぐに答えは返ってくるはずだ。だけど…… 「なぁ、天和って他の奴ともこんなことしてたの」 「は?」  俺の先端に口付けながら、炎樽がぼそりと呟いた。 「……何か妬ける」 「っ……!」 「ビクってなったんだけど。……あは、天和も可愛いとこあるなぁ」  ……マカロ。お前には後で握り飯十個を褒美として振る舞おう。

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