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第3話 秘密の土曜日・7
「天和、イきそう?」
「……ああ」
正直言って俺と炎樽の「エロい奴」の認識はかなりズレていたらしく、催眠により普段と比べればとんでもない淫乱になった炎樽ではあるが、俺には少し物足りない。元々殆ど経験のない奴だから、これが炎樽なりの「淫乱」のイメージなのだろうが……
「俺の口に出してもいいよ。濃いの出して」
「………」
恐らくはエロ漫画の知識なんだろうな、と思う。
「炎樽、床に寝て脚開け」
「え? う、うん……」
やっぱりこいつが相手なら、されるよりもする方がずっといい。
素直に仰向けになった炎樽の両脚を持ち上げ、左右に開かせる。下着と見間違えるほどの短いパンツは肌触りの良いタオルのような素材で、外国人の女が運動する時に穿くやつみたいだ。
その短い裾から覗く脚の付け根が艶めかしく、思わず生唾を飲み込んでしまう。炎樽は頬を染めてじっと俺を見つめていた。白いTシャツに浮いている乳首を隠そうともせず、大人しく俺の愛撫を待っている。
「天和……」
「顔赤いぞ」
「……触って欲しい、天和」
あぐらをかいた俺の膝に炎樽の太股を持ち上げて乗せ、パイル地のパンツの上から硬くなったそこを揉む。パンツの柔らかい生地に包まれた炎樽の性器は触れているだけで気持ち良く、生地自体が薄いために形がはっきりと手のひらに伝わってくる。
「あ、ん……」
炎樽の方も心地好さげに身をくねらせ、俺の手に押し付けるように腰を揺らしていた。
「天和、ぉ……。乳首も、……」
普段なら絶対に言わない台詞を吐かれ、理性が吹っ飛びそうになる。嫌がる姿ももちろん良いが、こうしてねだってくるのもかなり良い。
イコール、全部良い。
「乳首、どうして欲しい」
「ん、……舐めて欲しい。天和、気持ち良いのしてくれよ……」
言いながら炎樽が自分でシャツを捲って見せた。平らな胸にそこだけ尖ったピンクの乳首が恥ずかしそうに俺を誘っている。それを見てどうしても口元がニヤけてしまう俺は、恐らく死んでも硬派な男にはなれないのだろうと痛感する。
「してやるよ、嫌って言うほどな」
「あっ……」
炎樽の股間を弄りながら体を倒し、その小さな乳首を口に含む。がっつきすぎて息が荒くなっているが、今の炎樽はそんなことは気にしていない。ただ快楽のみを俺に求めている健気でエロい幼獣だ。
「天和っ、……」
その無垢な体を貪りながら、若干胸が痛むのを感じた。炎樽の願望が入っているとはいえ、これでは無理矢理やっているのと変わらないのではないか。──いや、今までも無理矢理やっていた。嫌がる炎樽の姿さえ楽しみながら今と同じことをしていたのだ。
「ん、あぁ……天和、熱くて気持ち、ぃ……」
嫌がってた炎樽と、今のエロい炎樽。どっちも美味しく喰えるが、どっちが炎樽の本当の本音なのか、……頭の中がこんがらがって、乳首を口に含みながらハテナマークを飛ばしてしまう。
クソ。こんな時に限って余計なこと考えるような奴じゃねえだろ、俺は。
「天和……」
「……あ?」
炎樽が俺の髪を緩く掴み、顔を上げさせた。
「───」
そのまま強引に後頭部を引き寄せられ、唇を塞がれる。一瞬、何をされたのか理解できなかった。それほど予想外なキスだった。
「……炎樽、……」
「どうせ、俺がこうなってるの、……マカの不思議な道具のせいなんだろ……。俺いま、お前にすっげえ頭突きしたいけど……それ以上に……」
「………」
「それ以上に、お前に触れてもらいたくて仕方ない……。お前が躊躇してるの、伝わってくるけど……お願いだから、やめ、ないで……」
潤んだ目には涙が溜まっている。必死で俺に訴えている。それを言わせているのは俺が夢魔の水晶を使ったせいだ。自分が情けなくて、こっちの方が泣けてくる。
「済まねえ、炎樽」
「謝るなって……。お前が思ってるほど、俺いま自分の意思で喋ってるよ……。ていうか、……少しずつ、……正気に戻ってきたんだけどっ?」
「っ……!」
胸倉を掴まれ、ぐっと顔を寄せられる。
「よくもやってくれたな、天和……!」
「げっ、いや、炎樽……っ? ちょ、待て……頭突きすんなっ……」
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