80 / 122

第6話 夢魔たちの休日・8

「うわああぁ、ほた、ほたるううぅぅ!」 「わ、どうしたんだよマカ!」  涙と鼻水をまき散らしながら飛んで帰ってきた俺は、炎樽の胸に顔を埋めて更に泣きじゃくった。サバラに借りたスーツはあの場で全部脱げてしまって、今の俺は裸だ。 「不細工なツラだな。追剥ぎにでも遭ったのかよ?」 「たっ、た、たかともおぉぉ!」  お茶でもしようと思っていたのか、ダイニングテーブルにはお菓子や二人分のジュースが乗っていた。 「はいはい、落ち着け」  お母さんみたいに優しく、炎樽が抱きしめた俺の背中をぽんぽんと撫でる。俺はしゃくり上げながら炎樽を見上げ、「戻って来れた」という安心感にホッとしてまた泣いてしまった。  そんな俺の翼を引っ張って、天和が眉根を寄せる。 「おい、チビ。いい加減離れろよ」 「まあまあ、いいじゃん別に。子供に冷たい奴は嫌われるぞ」 「コイツは子供じゃねえだろ、元々は」 「……で、マカ。何があった? サバラとまた喧嘩したのか?」  俺は無言で首を横に振り、炎樽の胸に顔を埋めた。 「怖くないから言ってみろって。意地悪されたんなら俺がちゃんと言ってやるしさ」 「……あ、あのなほたる。おれ、サバラに言われて、カッコいい服着て……」  これまでの経緯を説明すると、天和がテーブルに拳を叩きつけて激昂した。 「やっぱりガキじゃねえだろうが! こちとら禁欲生活記録更新中だってのに、てめぇは真っ昼間から風俗ってどういうことだコラァ!」 「ひいぃっ……!」 「いきなり怒るなってば、天和。そんな自分の事情言ったって仕方ねえだろ。それにマカは性欲云々じゃなくて、夢魔としてそういうのも必要だろうし……」 「据え膳放り出して泣きながら帰って来たんだろうがよ。情けねえ男だな」  天和の言葉がグサグサと突き刺さる。 「そんなことないって、むしろ俺はちょっと安心してるし。意外にマカが純粋だったって知れて嬉しいしさ」  炎樽の言葉がふわふわと俺を撫でる。 「純粋じゃねえ、ビビリなだけだ」 「そりゃ天和は、据え膳は残さず全部食う主義なんだろうけど」 「今は食ってねえ! ていうか食わねえ!」 「け、けんかしないで!」  鼻水を啜りながら訴えると、「取り敢えず」と炎樽がテーブルの上にあったイチゴミルクのストローを俺に咥えさせてくれた。 「マカが無事に戻って来れて良かった。サバラも意地悪でやったことじゃないみたいだし、いい勉強にはなっただろ」 「うん……」 「ていうか、思ったんだけどよ……」  天和が俺のほっぺたを指で押して、言った。 「お前、タチよりネコの方が性に合ってんじゃねえの」 「……へ?」

ともだちにシェアしよう!