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第10話 みんなのハッピーなまいにち・3

「熱っ……!」  出来立てのたこ焼きを頬張ってヒーフー言う俺と、 「うんめええぇっ! エッグタルト最高!」 「んめー」  口周りにクリームとパイ生地をくっつけて笑うマカロとタルト。 「お前ら、本当によく食うな……」 「天和は腹減ってないの? 本来ならこの中で一番食うはずだろ」 「限度ってモンがあるだろうが……俺は甘いモン好きじゃねえし」  教室内のフリーイートスペースの一角はちょっとしたカフェのようになっている。エッグタルトにクレープ、アイスとドーナツ、ソーダ。マカロはともかくタルトもばくばく食べていて驚いた。赤ん坊でも流石は夢魔の胃袋だ。 「たーとも、あいす」 「おっ、くれるのか。ありがとうな」  タルトが小さなスプーンですくったアイスを天和に向けた。甘い物は苦手でも我慢して食べてやっている天和。その姿は鬼らしさの欠片もない。 「タルト、俺には?」 「ほたうー、あいす」 「ありがとー」 「炎樽、その子誰の子だよ?」  幸之助が追加のエッグタルトを机に置きながら、俺に耳打ちする。 「へへ。うちの子」  不良の多い男子校に赤ん坊がいるという珍しさから、幸之助の後もクラスメイトが次々やってきては声をかけてくれた。普段は友人が少ないと思っていた俺だけど、こうして何かのきっかけがあれば簡単に打ち解けることができると知れて、気恥ずかしさに心の中がくすぐったくなる。 「……せっかくのお祭りで炎樽と天和、二人きりになってもらおうと思ってたのに……結局ごめんな。赤ちゃんいるから、一緒にいてもらって」 「何言ってんだよ、例えタルトが産まれてなかったとしても、俺はマカと天和と過ごすつもりでいたんだし気にするなって。祭だからこそ人数多い方が楽しいじゃん」 「炎樽……」  うるうると大きな目を濡らすマカロの頭を撫でたのは、天和だった。 「お前も身内だろ」 「た、天和ぉ……」 「俺と炎樽の子供みてえなモンだし」 「じゃあタルトから見たら、天和と炎樽は爺ちゃんじゃん!」  大笑いするマカロを見て、タルトも意味は分からないけれど嬉しそうに笑っている。 「ていうか、人間の種を取りに来たのに自分が子供産んでるし。そういう所が落ちこぼれって言われるところなんじゃねえの」 「そ、それは言わないで!」  天和にからかわれて目を回すマカロはやっぱり初めて会った時と同じ、悪魔のくせに天然でどこか抜けていて、正直言ってどんくさい。 「俺だってしっかりしないと……いつまでも落ちこぼれな所、タルトに見せられないもんな」 「マカロの純粋さとサバラのずる賢さが合わされば、良い感じになるんじゃない?」  どんくさいけど、いつだって真剣で頑張り屋で、騙されやすいけど優しくて、俺や天和のために必死になってくれる心も持っている。  それがマカロという夢魔だ。俺が出会った親友だ。

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