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再来2
俺と江藤はしばらく歩いて、江藤はとあるマンションの前で止まった。
「おいで。」
5階の一番奥のドアの前に連れてこられた。ドアを開けると同時に聞こえたのは男達の話し声。玄関には大量の靴が散らかっていた。嫌な予感がして、俺は逃げようとしたが江藤に携帯の画面を見せられてすぐに逃げるのをやめた。
「おせーよ、江藤。」
音を聞きつけてか、男達がぞろぞろとこちらにやって来た。全員、見覚えがない男達で、所謂、不良と言う部類の人間で、それだけで怯みあがってしまった。江藤を含めて5人の男がいたが、マンションの部屋はかなり広いため狭くは感じなかった。俺は複数の手に捕まれて、そのまま引きずられるように連れて来られると男達に囲まれるように座らされた。
俯いていると、会話が耳に入ってきた。
「もっと、男の娘的なのイメージしてたわー。」
「だよなー、江藤の女って可愛い感じのばっかじゃん。」
「いや、でもやってみると違うのかも。」
江藤があの事を男達に話したのだと思った。見ず知らずの他人に知られてしまっている事が恥ずかしくて、顔が赤くなるのが分かる。悔しくて、ギュッと目をつぶる。しばらく会話が続いて、後ろから羽交い絞めにされ仰向けに倒された。目を開けると沢山の好奇の目に晒されていて、抵抗したが複数の手がさらに抑え付けてきてまったく動かない。身動きが取れない俺は睨み付ける事しか出来ない。
「へぇ、結構そそる顔してんじゃん。」
一人の金髪の男が興奮した様子で言った。耳元で羽交い絞めにしている男の荒い息が首筋に当たり鳥肌が立つ。服がたくし上げられて、体に手が伸びてきた。体中を複数の手に弄られ、快楽よりも不快の方が強かった。昨日の余韻で胸の突起に触れられるたびに、微かに感じてしまう。
「早く突っ込もうぜー?」
さっきの金髪が言ったのが聞こえた。ズボンはすでに脱がされていて、前には透明の容器を持った男がニヤニヤしている。穴に冷たい何かを塗りたくられ、一本の指が侵入した。
昨日の情事で多少緩くなったそこは、すんなりと指を受け入れた。
「冷た…っ、やっ…抜け!」
「へぇー結構簡単に入るんだなー」
「まじー、俺も入れさせて」
男達は俺の様子を気にすることもなく、また違う男の指がもう一本侵入してきた。そして、二本の指はバラバラに動き、俺の体内を荒し回った。その動きは優しさもなく、興味本位で触っていて、まるで玩具で遊ぶ子供の様に無遠慮なものだった。前立腺を見つけると、力まかせに指で押し潰してくる。
「う、あぁ…!!」
「三本目も簡単に入ったよ。」
「言わない、で……っ!」
俺が抵抗しても、男は無遠慮に指を押し進めてきた。たいして慣らさず指が増やされた其処は痛みをともなった。昨日の傷が開いたかもしれない。
「痛い…も、う…やだぁあ、っあ!」
俺はしゃくりを上げて泣いたが、その行為は逆に男達を煽るだけだった。意志は次第に快楽に流され始めていた。粘着質な水音が部屋に響きだした。耳から支配する音は何も考えられなくした。
不快はすっかり快楽に変わっていて、強姦されてるのに、感じている自分が嫌になる。そんな自分に消えたくなった。
「もう、入れてもいいかなぁ。」
一人の男が指で、俺の後方を指で広げてみせ、冷たい空気が入り込み鳥肌がたった。
もう、考えるのはやめよう――。
何かの男が言った。俺は既に言葉の意味が分からないほど意識が朦朧としていた。
「もう帰れ。」
その時だった。江藤が聞いたこともないような冷たい声で男達言い放った。
男達が呆然としていると、指を入れている男を江藤が蹴り飛ばした。無抵抗に蹴り飛ばされた男は蹴られた腹を押さえて呻いている。その男を連れて男達は逃げるようにぞろぞろと帰って行った。
残ったのは俺と江藤だけ。
「どういうつもりだ…。」
「俺だって…わかんねーよ…。」
意味が分からなかった。こういう状況にしたのは江藤なのに、張本人の彼がひどく怒っていたからだ。江藤は何も言わずに俺の上に馬乗りになった。江藤はこの部屋に入ってからまだ一度も俺に触れていない。
「ムカつく…坂下の事、教えなきゃ良かった。」
きっと、江藤は今まで女性を彼らと共有してきたのだろう。名も顔も知らない女性に同情した。男の俺より恐怖と絶望を味わっただろう。
江藤は俺の唇に口付けを交わす。深い口付けに抵抗するほど俺に力は残っていなかった。何より、その口づけが優しくて安心してしまう。
「んぅ…っ」
舌を差し込まれ、息が苦しくなった。俺は江藤の背中に爪を立てたが江藤は動かない。
江藤の様子は少しおかしかった。唇が離され、俺は荒い呼吸を繰り返す。
そして、俺は腕で唇を拭う。江藤は俺の様子を面白くなさそうに見ていた。
「ちゃんと消毒しよーな。」
俺は嫌がったが、江藤は聞かなかった。引きずられるような状態で俺は風呂に連れて行かれ、タイルの上に座らされる。タイルは冷たくて、体が少し震えた。わずかに纏わりついた服を脱がせ、シャワーを頭からかけられた。
「冷た…!!」
シャワーの最初の水は冷たく、徐々に温かいお湯になった。
温かいお湯に包まれながら、俺は密かに涙を流した。江藤は何も言わずに後処理を続けるが気づいているだろう。
「もう、俺以外に抱かれんな。もちろん、圭吾にも。」
江藤は俺の首筋に唇を落とした。首筋に微かに痛みが走る。先程の行為ですでに柔らかくなったそこに江藤は指を挿入し始めた。柔らかくなった後孔は簡単に江藤を受け入れた。
「っあ、そんな…勝手な、ぁあ!」
江藤は何も言わずに後ろから自身を挿入してきた。俺が感じる場所を何度も突き、俺に快楽を一方的に与えてくる。先程の行為が不完全燃焼だったため、簡単に流されてしまいそうになる。頭に過るのは圭吾の事だった。圭吾にこの事を知られたら、どう思うだろうか。軽蔑されてしまうだろうか、捨てられてしまうだろうか。
「圭吾…っ。」
「っ…!」
中に熱いものが溢れると同時に俺は意識を失った。
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