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月曜日

月曜日 翌日、俺は気が重く感じながらも学校に来た。圭吾とは何だか後ろめたさがあって会いたくはないと思った。同じクラスなのだから会わないわけはない。圭吾はいつものように俺に話しかけてきた。まるで何もなかったかのように。 「疲れてるみたいだけど、大丈夫?」 「あ…うん、大丈夫…。」 圭吾は俺の髪を撫でた。その手は優しくて泣きそうになった。圭吾の仕草や表情が愛おしいという思いが溢れる。あの時の事を圭吾に言うべきでは、と考えてみたけれど嫌な想像ばかりが脳内を巡って踏み出すことは出来なかった。もっと、圭吾と一緒にいたいという思いばかりが先行していった。 「次、体育だっけ?」 「うん…今日はちょっと体調崩してるから休む。」 今日は腰が痛くて動ける状態じゃない。それに体の事もあったため、あらかじめ、欠席届も取りにいっている。圭吾は少し残念そうな顔をして、すぐに着替え始めた。 俺は何だか辛くなって、先に教室から出てきた。圭吾といるのは胸が苦しい。それに泣いたせいか目の周りが真っ赤であまり人には見られたくないと思っていた。 「あ、俊哉じゃーん!」 体育館に向かう途中で声がして、後ろを見ると江藤が立っていた。いつの間にか、江藤が俺の事を名前で呼んでいて驚いた。江藤のクラスは移動教室らしく、教材を一式持っている。その隣には伊野もいた。 「何だよ…。」 「今日は一人なのー?」 睨みつけると江藤はニヤニヤしながら俺を見た。 何がそんなに嬉しいのだろうか、江藤はよくわからない。無視して行こうとすると後ろから抱きしめられ、動けなくなってしまう。 「朝から、俊哉に会えるとは思わなかったなぁ。」 江藤が俺の尻を掴んで揉みだした。思わず伊野に助けてくれと視線を寄越すと伊野はため息をついて、江藤の耳を引っ張った。江藤は流石に痛かったのか大人しく引き下がった。 「っう…痛い痛いよ伊野ちゃーん!」 「早く行かないと遅れる。それに、宮田になんて言われるか…。」 「宮田なんてどうでもいいの!」 伊野と江藤の会話に違和感を感じた。二人は圭吾に何か言われたのだろうか。 二人に尋ねる事は出来なかった。体操着に着替え終えた圭吾が俺の横に立っていたからだ。 「まだこんな所にいたのか?お前らも、あんまり俊哉をからかうなよ。」 圭吾は俺を連れて二人から離れた。後ろを見ると江藤がこちらを睨みつけているような気がした。圭吾は何も言わないまま、俺を引っ張ってどんどん歩いていった。そして圭吾は資料室に入り、そのまま俺を壁に縫い付けた。 「…俊哉は俺の事、好き?」 圭吾に突然問いかけられて、驚いた。意図が分からず、頷いた。圭吾が好きなのは本当だった。けれど、何故今聞かれるのだろうか。圭吾は俺の首筋を撫でると、爪を立てた。痛みに顔が歪む。ちょうど、江藤に付けられた痕のあたりだった。 「誰に付けられたんだよ?」 「・・・・。」 「言えないのか?俊哉が誘ったのか、その身体で。」 圭吾の問いにすぐには答えられなかった。先程の二人の態度は圭吾と何かを約束をしているような素振りだった。何となく、江藤の名前は出せなかった。たぶん、昨日の江藤の優しさに触れてしまったからだと思う。それに、俺も圭吾に訊きたいことが事があった。 「…圭吾はなんで、あんな事したんだよ。本当は…。」 俺の事、嫌いなんじゃないか――。 そう言う前に圭吾は俺の唇に人差し指を当てた。 「ごめん、俺さ、あんな風にしか人を愛せないんだ。」 圭吾は酷いことをすることでしか、人を愛せないと言う。もし、耐えられないなら離れても良いとも。そう言って圭吾は体育館に移動した。突然の事に俺は戸惑いを隠せなかった。あの優しい圭吾が暴力的な行為でしか愛情を示すことが出来ないというのは信じられない話だと思った。確かに、圭吾と付き合った彼女は1ヶ月以内には別れている。なぜ続かないのか疑問を抱いていたが、以前もそうだったのかもしれない。暴力を振るわれた彼女たちは今の二択で別れる方を選んだのだ。 「圭吾はずるい…。」 そんな事を言われたら、離れられるわけがない。だって、俺はあの行為が愛情だって知って嬉しく思ってしまっているのだから。愛情が歪んでいても、俺自身を受け止めてくれるのならばそれでいいと、思ってしまう。俺自身も否定される恋愛ばかりをしてきたのだ、圭吾の気持ちも何となくだが分かる。 もしかしたら、告白しなければ良かったのかもしれない、圭吾自身も俺が親友と言う立場のままなら、再び暴力と言う愛情に悩まなかったのかもしれない。断っても、受け入れても親友を失うかもしれないという辛い思いをしなくてすんだかもしれない。今更、後悔しても遅いのだけれど、親友という関係を壊したのは俺なのだから。

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