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墓参(5)
「顔が怖いぞ」
その言葉にはっとして、隆人を見上げた。
訊きたいことがあるのだが、口に出すのがためらわれる。
「今日は別邸に行く」
心を読まれたようで顔に熱くなった。
隆人がふうっと息を吐いた。
「俺は家族よりお前を優先しなければならない。だが、同時に跡継ぎを育てるという義務もある。暁の剣術の師は俺だ。毎朝、稽古をつけている」
遥は自分の眉がよるのを感じた。
「そんな顔をするな」
「どんな顔だよ」
「腹を立てている顔だな。だまされたとでも言いたげな」
遥は肩をすくめて見せた。
「あんたにはだまされっぱなしだろうが」
「『あんた』はやめろ」
「隆人さん? いや、隆人で十分だな。隆人が言葉足らずだから、振り回される。こっちの身にもなれ」
「すまない」
頬に伸びてきた手を払い落とす。
その時、咳払いが聞こえた。振り向くと慶浄が微笑んでいた。
「睦まじいことでございますな」
遥は唸った。さすがに今日会ったばかりの慶浄には噛みつけない。
「そろそろ高遠様のお墓に参りますか?」
そうだった。それが遥にとって今日一番大切なことだった。
慶浄の案内で階段を下り、中腹で左に曲がった。その奥に低めの木々に囲まれている一角があった。
慶浄がその植栽の向こうを示した。
「こちらでございます」
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