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※煽られるままに抱かせてください。

「「げっ」」 インターフォンの画面を見て二人ともが同時に唸った。 『はよ開けて!航がぐずるやん』 突然のバッファロー襲来に顔を見合わせため息をついた…… 玄関を開けると航を侑司に抱かせ、床に置いていた荷物を俺に渡す。 ずかずかとリビングに入っていく背中を見ながら二度目のため息を吐いた。 航をあやしながらリビングに入ってくる侑司が華さんの向かいに腰を下ろす。 「どうしたんですか、急に」 華さんが来なければあのまま仲良しができていたのに、と顔に書いてあるようだ。不機嫌そうな声と顔を隠そうともせずに侑司は言い、腕に抱いた航を揺らした。 「全然訪ねて来ん弟夫夫の心配した優しいお義姉さんになんなん、それ」 俺に持たせた袋の中から次々と出てくる大小さまざまなタッパーを積み上げながら華さんが侑司を睨む。 男二人暮らしを気に掛けて時々襲撃のような訪問をしては華さんはこうやって手作りの惣菜を届けてくれる。 二人の子育てに家事、仕事復帰にと目が回るほどの毎日のはずなのに、この姉は根っこのところで俺たちを無償に愛してくれる。 「こないだ美味しいってゆうた、厚揚げの明太子とチーズの挟むやつ、後は天ぷら粉付けて揚げるだけにしとるけん、はよ食べてね」 惣菜の説明をざっくりと終える頃航は侑司の腕の中で眠ってしまった。 「ちょうど良かった」 にこっと笑った華さんはレッサーパンダのように可愛い。 が、その笑顔に隠された黒い影はバッファローそのものだった………

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