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※煽られるままに抱かせてください。
縦縞しじらの黒の浴衣に淡いグレーの帯を締めた侑司は背の高さもあり、いつもより格段に大人の男に見える。
いつもは癖の強い毛を散らすようなアレンジをしている髪の毛も横を後ろに流すようにワックスで整えられ、履きなれない草履のせいか、歩き方まで違う。
住宅街に囲まれた小さな林のような緑の中にある小さな神社。
そこに向かう道中ちらほらと鮮やかな浴衣を着た女性達とすれ違う。
気のせいじゃない。
通り過ぎる女性たちはみな侑司を見ていた。
「遥さん、手繋いでいいですか」
俺の小指に指を絡ませながら侑司がそっと聞いた。
「無理だろ、ばか。まだ明るいし人が…」
「俺から離れないで下さいね。襲われそうだから」
お前じゃなくて?
頭の中に浮かんだ問いを見透かしたように侑司が笑う。
「遥さんは女性だけじゃなくて男性にも見られてるの気付いてないでしょ」
侑司がそう言いながら腰に手を回す。
帯のせいで触れた場所は臀部に近い。
「その浴衣、本当によく似合ってます。…綺麗です」
せっかく収まっていた耳がまた熱くなった。
沙綾形のグレーの浴衣に黒い帯。
色合いが侑司と真逆なのにペアルックみたいに感じるのは華さんの策略かと思うと面映ゆいが、似合うと顔を綻ばせながら褒められるとそんなことはどうでもよくなった。
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