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※煽られるままに抱かせてください。
神社までの短い参道の両脇に隙間なく屋台が並ぶ。色々な匂いに釣られながらも一先ずはお参りに向かった。
鈴を鳴らし賽銭を入れ手を鳴らし合わせる。
願うことなど改めて考えなくても一つだけだ。
目を開けて隣を見ると侑司はまだ祈っていた。
後ろに並ぶ人はいない。そのまま侑司が目を開けるまでその横顔を見つめ続けた。
目を開けた侑司が俺を見て目を細める。
「先に終わってたんですか」
「うん…」
「何をお願いしたんですか」
「……内緒」
石段を降りる俺に脚を早め数段先に降りた侑司が手のひらを向ける。女性ではないのにいつもこうして俺を気遣う。出逢ってから、付き合ってからもう何年も立つのにずっと変わらず同じように。
好きです、と聞き慣れるほどくれる言葉にも声色が変わるだけで熱くなるのは、
何年経とうが俺も変わらず侑司を思っているから…
「侑司…」
「はい?」
「………好きだよ」
「遥さん?」
俺の少し前を降りて歩く侑司がきょとんとした顔で俺を見上げた。
「なんとなく、言いたくなった。そんだけ」
これまでも気持ちを込めずに発したことはない。
でも何故だろう、さっき口にした言葉は初めて好きだと告げた時のように漸く伝えられた時のように、嬉しさと恥ずかしさが同居しているように感じた。
侑司の手が手首を掴み、石段を降りきった先の脇道に転ぶように引っ張り込まれる。
「あぶなっ」
言いかけた口が侑司に塞がれた。
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