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※煽られるままに抱かせてください。

目を覚ますとベッドの上だった。 遮光カーテンの寝室じゃ時間はまるでわからない。 サイドテーブルに置かれた携帯の電源を入れると深夜前だった。 ラインの通知がきている。 ふと隣を見るとベッドの上で侑司が正座をしていた。 「おはよ…何してんの」 「遥さん、ごめんなさい!!」 「へ」 がばっと頭を下げる侑司にのろのろと起き上がり髪を撫でた。 「何、どした?」 「あの…あの……本当にごめんなさいっ!!」 訳がわからない。 ヨシヨシと頭を撫でる俺に、一先ずラインを見ろという侑司に促され開く。 華さんからだ。 『いくらラブラブでも玄関で事に及ぶのはいかがなもんかなー。うちの靴にも気付かんとか何年経っても発情期か!!!』 「はっ、華さんいたの!?」 「すっ、すいませんっ!!」 頭痛がする……… まさか…まさかあんな場面を、よりにもよって華さんに見られ聞かれていたなんて。 ラインには続きがあった。 『薫くんには黙っといてあげるし何も聞かんかったことにしてあげるけん、遥くんうちのおねだりわかるよねー?』 「おねだり……?」 「ね、義姉さんて呼んで♡と………」 未だ布団に額をつけたままの侑司が声を絞り出す。 「お前……呼ばされたの?」 「呼ばんと帰らん!薫くんにゆってもいいんかなー?て言われて……」 ため息が出た。 そこにまたラインの通知が届く。 『うちでも今はベッドは別々やのに、ダブルやったとはねー』 そうだった……寝室も見られたんだった…… 頭を抱え込んだ俺にさらに通知の音が追い打ちをかけるように鳴る。 『遥くんエロかったねーーー♡♡♡』 それから二ヶ月、俺は華さんを避け続けた。 お預けによってバッファローと化した華さんの突然の襲撃に寝室に飛び込む前に捕まり、正座で華さんが満足するまで義姉さんと呼び続けた俺はこのまま一生華さんに頭が上がらない、そう思った………

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