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あなたからならどんな愛でも。

「お帰り」 仕事終わりに予約した歯医者に行った。 家に帰ると一足先に帰っていた遥さんが眩しいほどの笑顔で出迎えてくれる。 着替えるためにクローゼットに向かう俺の後ろを遥さんが付いてくる。 「なんでわかったんですか?」 脱いだスーツのジャケットを受け取ってくれる遥さんを振り返りつつ聞く。 不思議顔の俺を見た遥さんの耳が僅かに赤く染まった。 「あー、ここ。初期の虫歯、かな」 大きく開けた口の中をライトを当て覗きながら先生が言う。 「よく気付きましたねー」 マスクで目だけしか見えない先生がニコッと笑った。 初期の初期だった虫歯の治療は当日のみで終わり。 首を傾げながら帰宅して、今ここ。 スラックスをハンガーにかける遥さんを背中から抱き締め頬にキスをした。 「教えてください」 耳にそう囁くと遥さんの耳がさらに赤く染まった。 「………引かないって約束するなら、」 「約束します!!」 「………どうしても、聞く?」 「はい!」 ついには頬まで赤くしながら遥さんが俺の手を引きウォークインクローゼットを出、無言のままリビングのソファに座らせた。

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