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あなたからならどんな愛でも。
「……………後ろから」
「はい?」
「後ろから抱っこ」
「は、い…」
「顔見られてたら話せない」
顔が見えなくても赤くなってる耳や項は丸見えですけどね。
それは言わずに言われた通り開いた脚の間に遥さんを座らせ、後ろから腹に腕を回した。
「あ、のな……」
口ごもる遥さん。
絶対かわいい顔をしているはず。
前から見たい。
ウズウズするような気持ちを我慢して、項に唇を軽くくっつける。
「俺ね、お前の、、、匂いが………好きなの」
「……はい?」
予想外の答えに若干声が裏返った。
「汗の匂いも、耳の後ろの匂いも、手の匂いも。首の匂いも、頭の匂いも、えと、、、口の匂い、も」
「そうなんですか……」
「引かないって言った!」
遥さんが腹に回した俺の手をぎゅっと抓る。
「違います!引いてないですって!ちょっと驚いただけです。だって、これまでそんな素振りしたことなかったじゃないですか」
「………お前が起きてる時は……我慢してた」
拗ねたような口調に悶えそうになった。
起きてる時は。
じゃあ寝ている時は俺に寄り添って恥ずかしそうにしながらもクンクンと俺の匂いを嗅いでいたのかと思うと想像しただけで毛穴が開きそうだ。
胸に遥さんの体重が乗る。
振り返りつつ甘えるように頬に額を擦り寄せられた。
「着替えた後の服とか……枕の匂いとか、布団とか、お前の匂いがする物………全部、、、好き」
好きの部分だけ声が落とされた。
それがさらに煽る。
胸の奥から、身体の奥底からぼこぼこと湧き溢れるような感情が湧き上がる場所をざわめかせる。
「昨日ちゅーしててなんかいつもと違うと思って。初期で……良かったな」
子供を寝かしつけるような落ち着いた声色。
でももう落ち着かないところまで盛り上がってしまっていた。
「いつもと同じか、試してみませんか」
荒くなりそうな息を押さえ込み囁いた。
「……ちゅー?」
「……はい」
遥さんの手が頬に伸ばされる。
そっと触れた指先が熱い。
「………する」
睫毛が伏せられる。
何度も何度も、それこそ毎日するキス。
挨拶のように、会話のように重ねる唇が未だに毎日愛しい。
軽く重なり離れた唇を見つめた。
顎に触れ少し開かせた唇を舐めると遥さんの顎が上がった。
「もっとしてもいいですか」
「ん……もっと」
重なる直前に囁くように侑司、と呼ばれた。
あなたが呼ぶ自分の名前が愛してるに聞こえる俺は脳の細部まであなたに侵されてますね。
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