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あなたからならどんな愛でも。

「侑司!起きて!」 「……………へ」 もう一度額がぺちんと叩かれた。 「8時!!起きろ!!」 「…………はちじ………8時!?!?」 勢い良く起き上がった俺の額と遥さんの顎がごちんとぶつかった。 ひとしきりもんどり打ちあい、謝るのもそこそこにベッドから飛び降りる。 二人縺れるようにクローゼットに入り着替える。 鞄を持ち玄関に向かう。 「あ、髪の毛!」 「とりあえずワックス持ってけ!」 鞄を脚に挟みネクタイを締める。 洗面所からワックスを持ってきてくれた遥さんからお礼を言って受け取りジャケットのポケットに入れる。 「行くぞ!」 「はい!」 玄関を出て鍵を閉める。 エレベーターに乗り込むと二人で息を吐いた。 「間に合いますか?」 「まあ、ギリかな」 改めて顔を見合わせて噴き出した。 遥さんが締めかけのままのネクタイを直してくれ、そのまま引っ張る。 「おはよ」 「おはようございます」 そのまま重なった唇はいつものようにしっとりと甘かった。 「遥さん」 「ん?」 「俺も遥さんの匂い、好きですよ」 「………バーカ」 顔を背けたせいで赤く染まった耳が見える。 その耳に囁くとさらに赤く染まった耳を隠すように擦り遥さんが笑った。 あなたに負けないくらい俺も遥さんの全てが大好きです。 エレベーターのドアが開く。 いつもより急ぎ足で出て行く背中を追いかけながら思う。 仕事が終わり帰ったらまた改めて言わせて下さい。 昨夜だけじゃとても足りない、あなたへの愛を。

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