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いつまでも特別で。

まるで思い付かない。 先月くらいからずーっと考えてるのに、まるで思い付かない。 そうこうしているうちにもう目の前まで迫ってきていよいよ気持ちばかりが焦る。 初めてがこのマンション。 そもそも、それが間違いだよな。 マンションを超えるモノなんてそうそうない。 2回目は指輪。 3回目は欲しがっていた食器一式。 4回目は色違いでお揃いの腕時計。 5回目は温泉旅館の宿泊。 6回目は所謂一流ホテルの宿泊込みのブュッフェ 7回目の今年はどうしよう。 できれば形に残る物をと思うものの、侑司は殊更に物持ちが良い。 大切に使い続けているのがわかる物を誕生日だからと交換させるようなことはしたくない。 幾つあっても困らない物ならいいだろう、とパンツやネクタイや靴下なんかはふらっと買ってきてはいるが、誕生日は特別だ。 ソファに胡座をかいて悩み考えてる俺のところに侑司が後頭部を掻きながらやってきた。 「遥さん、また下着と靴下買ってきましたね?」 侑司の手にはタグがついたままのパンツと靴下。 「かわいーだろ?」 「かわいー………」 総パンダ柄のパンツと総麒麟柄の靴下。 最近の俺は「総」が気にいってる。 「あの、俺の引き出しが動物で埋め尽くされてきてるんですけど…」 「え、ダメ?」 「いや、ダメじゃないですけど、なんで動物なんですか」 そういや昨日のパンツは総うさぎ柄で、その前は総蛇柄だったか。 「十二支揃えたくない?」 「パンダがもう外れてますけど…」 「あ、そっか」 「こないだ買ってきた猫も違いますし、その前のライオンも」 「ライオンはヤバかったな」 思い出して噴き出した。 ライオンの顔がプリントされたパンツ。 ちょうどライオンの開けた口のところから侑司のアレが出るようになってて、 いつもみたいにパンツを下げるんじゃなくて穴から出せと出させたくせに笑いすぎてそんなムードじゃなくなったんだっけ。

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