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いつまでも特別で。

「ねぇ泰生さん。結婚て人生の墓場なの」 珍しく事務所で領収書の整理を眉間に皺を寄せながらやっていた泰生さんに聞くと、泰生さんが目を白黒させながら瞬いた。 「え?墓場?」 「ん、さっきの岩佐さんがそう言ってた」  「んー、僕は映画みたいだなぁと思ってるけど」 「映画」 「うん。ヒューマンドラマ系のね。楽しいばっかりじゃないけど、ドロドロの嫉妬や喧嘩やイライラもありつつ、最後まで人間くさい感じ」 「人間くさい…」 「結婚て生活だからね」 それもそうだ。 俺も侑司と喧嘩はする。 お互いがお互いに怒る喧嘩はそうない。たいていどちらかが怒る方で残ったのが怒られる方。 「泰生さんとこも奥さんと喧嘩するの?」 「そりゃするよ〜。たいてい僕が怒られてるけどね」 お弁当の空箱を出さないとか、トイレの電気つけっぱなしとかね。 そう言って泰生さんが苦笑いする。 「一方が頑張るだけでは成立しない。それを何十年も続けて、なんて奇跡だと思うよ、素敵だよね」 違う場所で産まれ生きてきた二人が出逢い恋に落ちる。それだけでも奇跡だと思うのに結婚して家族になり、そこからまた何十年も生活を共に過ごしていく。 毎日の繰り返しの中で薄れたり忘れてしまう伴侶への感謝の気持ち。 誕生日はそれをちゃんと伝えられる日、なのかもしれない。

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