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いつまでも特別で。
誕生日前日の夜。
仕事から帰ってきて夕飯を食べ、それぞれ風呂に入る。
さあ寝ようかという時間になってからベッドの上で膝を揃えた。
「侑司、そこ座って」
「は、はい」
向かい側で侑司まで膝を揃えて座る様に思わず噴き出す。
「お説教じゃないから膝崩していーよ」
「え、じゃあ何ですか」
うん、と頷いて息を飲む。
柄にもなく緊張してる。
「あのな、明日誕生日だろ」
「あ、そうですね」
忘れてました、と笑う侑司の髪を撫でる。
「今回は………まだプレゼント決めてないの。お前の欲しい物をあげたいと思って」
「はい」
嬉しそうに頷く侑司。
当たり前のように七年側にあった笑顔。
護るように導くように触れる手はいつも熱いほど。
変わらないものなんてない。
それは今でも思ってるけど、お前だけは変わらない、そう信じられる。
俺自身の気持ちもこの先ずっと変わらない。
「改めて言うのも変だけど……七年一緒にいてくれて……………ありがとう」
「遥さん…」
「欲しい物、考えといて。高い物でもいーよ」
膝を崩す俺の腕を侑司が掴む。
そしてそのまま自分の胸に引き寄せた。
「何でもいいんですか」
「ん、いーよ」
「じゃあ、遥さんが欲しいです」
「……、それじゃいつもと変わらないだろ」
「今度の休みはどこにも出掛けないで一日中裸でくっついていたいです」
「そんなのプレゼントになんない…」
「遥さんの一日を俺にください。それが、最高で最上のプレゼントです」
言い切る侑司に強く抱き締められそんなもの、と言えなくなった。
「………リボンでもつけようか」
「頭?首?ウエスト?それとも……」
「………ばか」
「はい、遥さんにはずっとばかでいいです」
揶揄う風でもなく、ふざける風でもなく、愛を告げるような声色にまるで答えるように気が高まる。
「俺も……ばかでいーよ……」
「え?何て言ったんですか?」
脇の下に手を入れられ持ち上げられる。
膝に乗せられ鼻が触れ合うほどの距離で問う侑司にちゅーをした。
「何でもない」
「キスに免じて許します」
納得いってない顔の侑司の顔を胸に強く抱き締めた。
お前が産まれたこと。
大きく何事もなく普通に育ったこと。
あの会社に転職してくれたこと。
そこで出逢えたこと。
俺を……好きになってくれたこと。
小さな偶然が嬉しくてたまらない。
自分以外の誕生日が嬉しいなんてお前が初めてだよ。
今度の休日までに買い物しっかりしとこうな。
そう言う俺を、胸に埋まっていた顔を上げ侑司がはいと言って笑う。
ずっと記憶に残る7回目の誕生日に。
ずっと二人の記憶に残る大切な誕生日に。
それを重ねて奇跡に、そう願うよ……………
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