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どこも俺のです。

最近侑司は俺のデコが好きだ。 「おはよぉございます…」 「おはよ」 まだ眠そうな顔、ボサボサの頭を掻きながらキッチンにいる俺のところにやってくる。 身を屈め頬にちゅーをする。 これまではここで終わりだったのが、左頬を包むようにしていた右手はそのまま上がり前髪を除け剥き出しになったデコに長めのちゅーをされる。 「なぁ」 「はい?」 「なんで最近デコ気にいってんの」 「え」 「えって、まさか無意識?」 「いや、あの…」 侑司の頬に赤みがさす。 「最近前髪伸びてきてるじゃないですか…」 「ああ、うん、そだな。切りに行く時間とれてねーから」 「汗で……張り付く前髪を除けるのが色っぽくて、その、目に焼きついてて、ですね」 「へぇーーーーー………お前の脳みそは相変わらず侵されてんな」 「はい!遥さんに侵されまくってますよ!」 「ああ、そう……」 今日の仕事が終わる。 デスクの上を片付けパソコンの電源を落とす。 「遥さん、帰りましょう」 いつもの侑司の笑顔に笑顔を返す。 「先帰っといて」 「何か用事ですか」 「ん、髪切ってくる」 「あ、はい………えええ!?」 「じゃーな」 遥さーーーんと悲しげな叫びに似た侑司の声を背中で受け止めた。 髪を切り家に帰る。 インターフォンを鳴らすと待ち兼ねたように間を開けずにドアが開きブスくれた顔の侑司が現れる。 「どーよ」 赤くなった頬にきらきら輝く目、ぽかんと開いた口。 「いいです!!!」 「だろ」 久しぶりにバッサリと切った髪。 殊の外侑司も気に入ったようだ。 そして、次の朝。 「おはよーございます……」 「おはよ」 いつものように頬にちゅー。 頬を撫でた手が首に触れる。 丸見えになった耳と項にちゅーされる。 髪が伸びるまでこのちゅーは続きそうだ。

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