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幸せのお裾分け。

6回目の結婚記念日を控えた週末の前日、遥からラインがきた。 『おちびたち俺らが見てるからたまには二人で出掛けてきたら?』 侑司くんの提案だろうな、と思わず苦笑いした。 誕生日はかろうじて覚えているものの、記念日なんて気にしたこともなかった遥。 そんなのいちいち気にしてたら毎日が記念日になるじゃねーか。あいつは昔から大雑把だからそう言って終わりだろう。 「遥くん?」 華さんが航《こう》の両手を持ち歩かせながらやってくる。 1歳を前に航は歩く練習に余念がない。ハイハイをしていた頃とは比べ物にならないほど行動範囲も興味も広がり、ありとあらゆる物が航の手の届かない高さに上げられている。 こないだきた遥はこのリビングを見て「空中で生活してんの」と真顔で聞いた。 「うん。子供たち預かるから結婚記念日に2人でデートしてくればって。どうする?」 「さすがうちの弟夫婦やーん!」 航の手首をもってジャンプさせる華さん。 航もキャッキャと笑い喜んでいる。 「限界は?」 「う〜〜〜ん、よく保って二時間、かな」 「じゃ近場のレストラン、予約する」 遥と侑司くんの、そして結はともかく航の限界を予測。 ああだこうだ言わなくても察してくれる奥さんとの会話や生活はいつまでたっても実に心地良い。 航を寝かし付けに華さんが寝室に消える。 おやすみのキスを頬にして。 そのキスをされる度に小さかった頃の遥を思い出すおれは自他共に認めるブラコンだ。

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