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幸せのお裾分け。
食事を終えた後、華さんがデパートに寄りたいと言った。
地下に行くと思った華さんは3階の紳士服売り場に一直線で向かう。
色々なネクタイを手に取り少し悩んだ後華さんは色違いのネクタイを二本買った。
その後地下に行き、いくつかの惣菜を買うと帰ろうとおれを見上げた。
「お帰りなさい」
出迎えてくれたのは侑司くん。
しっ、と人差し指を口に当てた侑司くんにリビングに連れられて行くとソファで三人が寝ていた。
侑司くんが遥の頬にそっと手を伸ばす。
ぴくりと動いた後ゆっくり開いた目が侑司くんを見、その後遥が蕩けるような表情で笑った。
お前もかけがえのない大切な人が出来たんだな。
わかっていたのに、こうして目の当たりにすると泣きそうだよ、遥。
「あ、お帰り」
遥の声と動きで結も起きる。
目を擦りぐずるような結を華さんが抱き上げる。
「これ、華さんから」
「違うやん、うちらからやろ」
さっき買ったネクタイと惣菜を渡すと二人は示し合わせたように声を揃えて礼を言った。
侑司くんがキッチンに消える。
冷蔵庫から出てきた箱をおれに渡す。
中身は華さんの好きな生クリームたっぷりなケーキ。
「結婚記念日、おめでとうございます」
侑司くんと並び祝いの言葉を口にする遥も幸せそうに笑う。
手を伸ばし、遥の髪を撫でる。
「何だよ?」
「なんとなく」
「何それ」
ふはっと笑う笑い方はずっと変わらないな。
おれだけの可愛い弟はもうおれだけのものじゃない。
でも……幸せならそれでいい。
おれもおれの大切な人たちを幸せにするよ。
家に帰り子供たちを寝かせた後、華さんが縦長の箱をおれにくれた。
開けて見ると遥たちに送ったネクタイと色違いのネクタイ。
「六年目のありがとう」
「うん…ありがとう」
思わず抱き締めた。
この小さな身体には溢れるほどのパワーと愛情が詰まっている。
これからもずっとこの人を護り護られる日常を。
それを改めて誓う通過点の大切な一日。
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