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※証明してみせます。
侑司がおかしい。
機嫌が悪い訳ではなさそうなのに、どこかおかしい。
何だろう。
そう言えばこないだ那奈ちゃんと電話した後くらいからおかしい気がする。
隙あらばくっついてきてるのに、それも減ってる気もする。
「なんかお前変じゃない?」
「いっ、いいえっ」
「なんか隠してるだろ」
「いっ、いいえっ」
この一週間、見てみぬ振りをした。
正確に言うとおかしいなと思ったのは火曜日で、那奈ちゃんと電話してた日から三日過ぎていた。
漸くの週末、侑司の膝に乗って甘えたい。
まるで俺との距離をとるように、朝から風呂掃除やら冷蔵庫の片付けやらに立ち動きっぱなしの侑司を呼んだ。
「侑司」
「は、はい」
「こっち」
リビングにやってきた侑司をソファに座らせる。
「乗せて」
「えっ」
「甘えたい」
「えっ」
あわあわする侑司の膝を跨ぎ座る。いつものように首に腕を回し、鼻を合わせるように擦り付けると、侑司が唾液を飲み込む音が聞こえた。
「何隠してんの」
「か、隠してなんか」
「俺に……言えないこと?」
「いえ、あの……」
侑司の手が俺の背中と腰に触れる。
小さなため息を吐き、侑司が軽く唇を付けた。
「那奈に新しい彼氏が出来たみたいなんです」
「良かったな!」
「はぁ」
「良くないの?」
「その彼氏が毎日毎日好き好きって言うらしくてウザいと」
「へぇ?」
「好きとか言うのはここぞという時だけでいい、毎日言われると嘘くさくてウザいと…」
なるほど。
見た目は明るく人にはやたらポジティブな侑司だが、実は自分のことに関してはネガティブだ。
那奈ちゃんから彼氏の話しを聞いて、もしかしたら俺にもウザいと思われるんじゃないかと、色々と控え、控えすぎて怪しまれたという訳か。
「お前はまたか」
「……すみません」
叱られた大型犬のようにしょぼんと肩を落とす侑司が可愛くて仕方ないと告げてやるべきか。
「俺さ、ヤキモチも毎日の好きやちゅーも嬉しいって何度も言ったよな?」
「……はい」
「どーもわかってねーみたいだから」
侑司の髪をくしゃりと撫で膝から降りる。
「遥さん?」
「身体に教えこもーか」
笑いながら言った俺の言葉に侑司がぴくりと身体を揺らした。
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