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私の願いは。
透明なキラキラと光る涙を流しながら、愛ちゃんは贈ったボードを長い時間眺めていた。
「真由さん、あのね」
漸く止まった涙に愛ちゃんが顔を上げる。
「遥さんがね、コンビニに来る時、侑司さんはいつも外で待ってたんです。きっと私の気持ちに気付いてたんでしょうね。いつも、いつも入って来ないで外で待ってたんです。どしゃ降りでも寒くても風が強くても、いつでも」
そう言った愛ちゃんの目からまた新たな涙が落ちる。
「たった5分でも、私にとっての遥さんはそれだけで、だから侑司さんの気遣いが嬉しくてでも悔しくて。もっと嫌なヤツだったら必死に頑張って奪ってやろうって思ってたのに…侑司さんもいい人なんて……本当に」
ずるい。
その声は唇を噛み堪える嗚咽で愛ちゃんの喉の奥に消えていった。
「遥さんに会えるかもしれないってそれだけでどんな時も頑張って働いてこられました。遥さんの笑顔が大好きでした。でも考えてみたら、その遥さんの笑顔を素敵なものにしてたのは侑司さんなんですよね」
ぐずぐずと鼻を啜りながら愛ちゃんが言う。
「あそこで働けて本当に幸せでした。真由さん、素敵なプレゼント、ありがとうこざいました」
ボードを胸に抱き愛ちゃんが笑う。
いつもの見慣れた笑顔で。
ねぇ、神様。
私の願いはやっぱり世界平和で。
差別も飢餓も貧困もない世界で。
誠一と治さん、響子さんと藤次郎さんと紘都くん、泰生さん家族、そして遥さんと侑司さん。新しい生活に向かう愛ちゃんも。
みんなが幸せでいてほしい。
願いが多い?
まだまだこんなものじゃ足りない。
私だって幸せに。今よりももっともっと、もっともっと幸せになることを望んでる。
誰かと比べることもなく、身の丈に合った、贅沢じゃなくていい、すぐ側にある暖かい幸せを。
神様、お願い。
頑張るから。
せめて、私の回りにいる人達を、どうかこのまま幸せなままで………
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