115 / 215

相変わらず可愛い人。

「なあ、枕交換して」 「は?」 さあ、寝ようかという深夜も深夜、ベッドの上で遥さんが俺の枕を抱きしめて言った。 「でも遥さん、低反発の枕はやだって」 「男は細かいことは気にすんな」 さらに強く枕を抱きしめ、言ってから遥さんが顔を隠す。 「顔だけじゃなくて、何か隠してんでしょ」 「な、何にも隠してないって」 「遥さん?」 「隠してない!」 もう耳が赤い。 付き合ってもう7年、遥さんが絆されるコツは知っている。 「話してくれないんですね……」 がっくりと項垂れる。 「俺は遥さんに隠しごとなんて一つもないのに…」 「ゆ、侑司」 「いいんです、大丈夫です、気にしないでください……」 遥さんがぼそっと何かを言った。 「何て言ったんですか」 「………の……匂いが……」 「え?」 「お前の匂いがする枕で寝たいっつったの!」 遥さんが抱き締めている枕を奪った。 頬だけじゃなく、耳も首も赤い。 「遥さん」 「もう寝る!枕!!」 俺が奪い取った俺の枕を抱き締めるように寝転がる遥さん。 項ももちろん赤い。 照れないで普通に言えばいいのに。 なんて可愛いんだ。 「何してんの」 「え」 まだベッドに座ったままの俺を遥さんがちらっと見る。 「寝る!」 「あ、はい」 「だから寝るって!」 「はい…?」 「後ろから抱っこしろよ…」 …………………悶え死んでもいいですか。 諸々を押さえ込みながらごろんと横になり、後ろから遥さんの身体を引き寄せ抱き締めた。 「当たってる!なぁ、当たってるって!」 「はい、寝ましょうね」 「だったら、ごりごり擦りつけんなよ!」 「治める方法が一つありますけど」 後ろから抱き締める俺の腕が軽く抓られた。 「………一回で止めろよ」 「精一杯努力します」 はぁとため息が聞こえ、遥さんが俺を振り返る。 口を開き、出した舌先で唇がぺろりと舐められた。 「枕は返さねーからな」 「……はい」 時々枕の位置が変わっていた謎がようやく解けた。 この可愛い人は俺のです。

ともだちにシェアしよう!