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相変わらず可愛い人。
「なあ、枕交換して」
「は?」
さあ、寝ようかという深夜も深夜、ベッドの上で遥さんが俺の枕を抱きしめて言った。
「でも遥さん、低反発の枕はやだって」
「男は細かいことは気にすんな」
さらに強く枕を抱きしめ、言ってから遥さんが顔を隠す。
「顔だけじゃなくて、何か隠してんでしょ」
「な、何にも隠してないって」
「遥さん?」
「隠してない!」
もう耳が赤い。
付き合ってもう7年、遥さんが絆されるコツは知っている。
「話してくれないんですね……」
がっくりと項垂れる。
「俺は遥さんに隠しごとなんて一つもないのに…」
「ゆ、侑司」
「いいんです、大丈夫です、気にしないでください……」
遥さんがぼそっと何かを言った。
「何て言ったんですか」
「………の……匂いが……」
「え?」
「お前の匂いがする枕で寝たいっつったの!」
遥さんが抱き締めている枕を奪った。
頬だけじゃなく、耳も首も赤い。
「遥さん」
「もう寝る!枕!!」
俺が奪い取った俺の枕を抱き締めるように寝転がる遥さん。
項ももちろん赤い。
照れないで普通に言えばいいのに。
なんて可愛いんだ。
「何してんの」
「え」
まだベッドに座ったままの俺を遥さんがちらっと見る。
「寝る!」
「あ、はい」
「だから寝るって!」
「はい…?」
「後ろから抱っこしろよ…」
…………………悶え死んでもいいですか。
諸々を押さえ込みながらごろんと横になり、後ろから遥さんの身体を引き寄せ抱き締めた。
「当たってる!なぁ、当たってるって!」
「はい、寝ましょうね」
「だったら、ごりごり擦りつけんなよ!」
「治める方法が一つありますけど」
後ろから抱き締める俺の腕が軽く抓られた。
「………一回で止めろよ」
「精一杯努力します」
はぁとため息が聞こえ、遥さんが俺を振り返る。
口を開き、出した舌先で唇がぺろりと舐められた。
「枕は返さねーからな」
「……はい」
時々枕の位置が変わっていた謎がようやく解けた。
この可愛い人は俺のです。
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