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※会いたい。

仕事に追われる日中はいい。 目の前の仕事を消化することに集中できる。 一人になりたいのに、一人になると思い出すのは愛しい人の体温に匂い、膝の上の重み。 何故ここにいないのか。 それを毎夜繰り返す。 「侑司、お前一旦帰るか?」 「そんな疲れた顔してますか?」 皆集まっての夕飯時。 藤次郎さんの言葉に笑みを返せたかどうか自信がなかった。 たかが一ヶ月ほどで情けない。 個室を貰えてるだけありがたいのに。 「帰りませんよ、終わるまで」 遥さんに、あの環境に甘えすぎてた。 例え消去法だろうと俺を選び連れてきてくれた藤次郎さんのためにも、あの会社を背負っている以上みっともない仕事だけはしたくない。 「すいません、ちゃんとやります」 俺の頭をでかい手がわしゃわしゃと掻き混ぜる。 「お前はこれまでもちゃんとやってるよ」 白く綺麗に並んだでかい歯をにかっと笑った口から見せながら藤次郎さんが言う。 ありがとうございます、と返しながらまた遥さんを思い出した。 あの人に言って欲しい言葉だったから。 無理矢理に区切りをつけて挨拶をして部屋に戻る。 戻りながら携帯をタップして時間を見ると遥さんからLineがきていた。 開くと誠一さんと真由ちゃんが笑顔で写っている写メ。 真由ちゃんの若干引き攣ったような笑顔に苦笑が漏れる。 写真嫌いの遥さんで良かった。 今下手に写真を見てしまったら触れずにはいられなくなってしまう。 「あ」 まだ続きがある。 指で送り、送った指も、着いた部屋の前で脚も止まった。 『真由ちゃんに撮ってもらった』 それだけ書かれた文字の下、拗ねたような少し尖る口もと、そっぽを向いた横顔。 画面から消えそうなギリギリの所、親指と人差し指で作られたハート。 きっと真由ちゃんにやらされて照れてるんだろう… その場面が容易に想像出来、身体の奥がぞわりとざわめく。 「はぁ〜〜〜ヤバい……」 ドアの前でしゃがみこんだ。 会いたい。 抱き締めたい。 もういいと、わかってるからと、宥めるような、でも強請るような甘えた声を出すまで好きだと囁きたい。 ずしりと重くなった下半身を引き攣るように部屋に入った。

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