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※会いたい。

2月最初の日曜日。 痛いほどに冷えた空気でも晴れた空の下、マラソン大会は無事行われた。 段取りで多少手間取ることは何度かあったものの、マラソン大会後の授賞式を終え、キングとクィーンを決めるイベントも盛大に盛り上がったまま成功を納めた。 ぜひ来年もやりましょう!との称賛の声があちこちから聞こえる中、俺が探すのはただ一人。 広い催し物会場に溢れかえるほどの関係者。 きっと俺を探してる。 早く、早く。 焦る気持ちとは裏腹に思うように進めないもどかしさ。 見つけたい人が見つからない腹ただしさ。 後ろから腕を捕まれ、期待とともに振り返ってみると。 熊のようなおっさんが呆れた顔で俺を見下ろしていた。 「藤次郎さん…」 「ほれ、行ってこい!」 額にベチンと貼り付けられたのはカードキー。 「ご褒美がお待ちかねだぞ」 藤次郎さんが言い終わる前にもう身体が動いていた。 ここにいる。 あの人が、愛しくてたまらない人が。 握りしめたカードキーにある部屋番号を確認してエレベーターに走る。 会える。 ようやく会える。 ようやく触れられる。 これまでの疲れが一気にどこかへ吹き飛んでいく気がした。

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