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※会いたい。
ホテルを出たのはチェックアウトギリギリの時間だった。
ここに来た時と同様、キャリーケースをガラガラと引きながら遥さんの腰を抱く。
着てきたスーツはドロドロの皺くちゃで、俺の普段着を着た遥さんの姿に隠すことなく萌える俺を遥さんが仰ぐ。
「なぁ、ご褒美になった?」
タクシーを待つ僅かな時間、遥さんが聞いた。
「勿論です。遥さんは?」
そう聞いた俺に意味有りげな笑みを返すだけで、遥さんは答えなかった。
二ヶ月ぶりの我が家。
玄関に入ると身体中がほっと息を吐いた気がした。
玄関に並ぶのは遥さんの仕事用の革靴と、幾分汚れた俺の革靴。
「あとで磨こうな」
「はい」
ドアを開けた先のリビング。
人のいなかったリビングにお掃除ロボットさんが動く音。
「昨夜の分掃除してもらお」
「…はい」
向かい合ったり、後ろから抱き同じ向きでテレビを見たり、何やかんやでほとんどの時間二人で過ごしたソファ。
もう随分前のように感じる。
「侑司、座って」
遥さんに言われ、ソファに腰を下ろす。
俺の脚を開き、その間に立った遥さんが頬を撫でる。
「おかえり」
「…………ただいま」
髪を撫でられ、頭を抱え込まれ、胸の奥から何かが込み上げる。
「抱っこ」
「………え」
「だーっこ」
「あ、はい」
太腿に感じる重さと体温。
髪に鼻を埋められる擽ったさ。
「これが、俺の本当のご褒美」
「……はい、俺もです」
「ゆーじ」
「はい」
「おかえり」
「はい」
会えない間の寂しさを埋めるように、呼べなかった分まで取り戻すように、
遥さんは何度も何度も名前を呼び、俺も遥さんと何度も何度も呼んだ。
膝の上でこれでもかと甘える愛しい人。
山のような洗濯物に、クリーニング行きのスーツ二着。
ぐうぐうと鳴る腹を無視し、遥さんと俺は長い間ご褒美を思う存分堪能し合った。
長期出張はもうこりごりだけど、こんな極上のご褒美が貰えるなら、いつかまたやってもいい。
キスをねだる可愛い人を抱き締めながらそう思った。
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