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スイッチはどこですか。
「遥さん!掃除しますよ!」
「あ〜〜〜〜〜、うん……」
侑司の声が遠くに聞こえる。
長期出張から帰ってきて初めての週末。
部屋の隅っこ、風呂やキッチンの排水口を気にしていたのは知ってる。
「埃があったって俺は死なない」
ソファにだらりと寝転がる俺を見て侑司が深いため息を吐く。
「綺麗な部屋の方がいいでしょ?」
「ん〜〜〜そりゃあまぁ…」
「じゃあやりましょ!」
せっかく帰ってきたのに掃除掃除掃除掃除。
掃除より俺に構え。
そう言いたいのを我慢してむっくりと起き上がる俺を、やれやれと呆れ顔で侑司が見下ろす。
「じゃーやる気スイッチ押して」
「は?」
「俺のやる気スイッチ押してくれたら掃除する」
「どこにあるんですか」
「知らない」
鼻を指先で押す侑司。
「ブー。違うみたい」
「押すとこなんてそんなにないでしょ」
そう言いながら乳首を押す。
侑司の顔がニヤける。
「ブー。違う」
「あと押せるとこなんかあります?押す、んじゃないんですか?」
「さあ?」
チュとおでこにチューをされる。
「惜しくなってきたかも」
ははっと侑司が笑う。
今度は唇にチューをされた。
「惜しい、かな」
「どこですか」
「言っていいの?」
「遥さん…そんなに掃除したくないんですか」
ほっぺたが引っ張られた。
「掃除より……構って欲しいの!」
「素直にそう言ってくださいよ」
ニコッと笑った侑司が俺を膝に抱き上げる。
頬を撫でた手が髪を滑り、項に触れる。
そのまま引き寄せられて唇が重なる。
重ねるだけじゃ足りなくて舌を絡める。
口内でじゃれ合うように濡れた音を立てながらチューをする。
「もっと…」
「別のスイッチが入りそうです」
侑司にチュとチューをした。
「いーよ?ダーリン」
「確信犯ですね…」
「離れてた分甘えさせろよ」
「…………はい」
「掃除と俺、どっちが好き?」
「遥さんです」
食い気味で答えた侑司にこれでもかとくっついてやる。
「好き」
「遥さん…」
「大好き」
首に縋りつくように抱きつき言う俺を、抱き締め返しながら侑司が熱の篭った息を吐いた。
「遥さんは俺のスイッチがわかってるんですね」
「押してねーけど?」
「無意識でも押したんですから、責任とってください」
「何のスイッチ?」
わかってるくせに。
拗ねた顔と声の侑司がぼそっと零す。
「ベッド?ソファ?」
「………ベッドで」
「じゃー抱っこ」
「……………はい」
いつものように抱き上げ連れて行かれる寝室。
ベッドの上にそっと寝かされ、覆い被さる侑司に手を伸ばす。
「掃除もちゃんとするんですよ」
「分かってるよ、ダーリン」
「本当ですか…」
まだ煩く喋ろうとする口を塞いでやる。
お前も俺のスイッチ、良くわかってるよ。
そう言ってやろうと思ったけど、熱い舌の侵入で言えなくなった。
まあ、いいか。
お互いさまってことで。
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