152 / 215

喧嘩のあとは。

三次会に!と盛り上がったままのかつての同級生たちの誘いをなんとか振り切り、駅に急ぐ。 遥さんは俺と出会わなければ、俺が求めなければ、きっと普通の幸せを手にできたはず。 結婚をして、子供を授かり、労り合いながら普通の生活が出来たはず。 それを俺が奪った。 今、俺を思ってくれる遥さんがいる。 だから、だからこそ、俺が遥さんを幸せにするんだ。 使命にも思えるこの気持ちが、俺の原動力かもしれない。 俺からのLINEに遥さんから返事はない。既読もつかない。 とりあえず遥さんの実家に連絡をしないと。 ケツポケから携帯を取り出し、お義父さんの番号をスクロールしてタップする。 短い呼び出し音の後、相変わらずの無愛想な声がなんだ、と告げた。 「ご無沙汰してます、侑司です」 『わかってる。何の用だ』 「あの、これから伺ってもいいですか」 『これからって、お前はもう少し常識のあるヤツだと思っていたが』 「すみません、あの、遥さんは」 『遥?遥がどうかしたのか』 …………あれ? 実家に帰るって言ったよな? 「あの、遥さんは行ってないんですか?」 『来てないが』 「勘違いでした。夜分にすみません」 『おい』 さらに低くなったお義父さんの声に急ぐ脚が思わず止まる。 『口出しはしたくないが…その……』 「…はい」 『お前だから許し認めたんだ。遥を……頼んだぞ』 「はい!」 プツと切れた電話。 そのまま薫さんに電話をかける。 車を借りる算段をつけ、薫さん家に向かった。 散々薦められた酒を口にしなくて良かった、と心底思いながら。

ともだちにシェアしよう!