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※誰にも渡さない。

ひとしきりキスをして抱き締めあってからゴムを処理した。 給湯室に残されていたウェットティッシュで綺麗にした後服を整え改めて遥さんを抱き締める。 「やっぱりヤルなら家だな」 「え」 驚く俺の首に遥さんの顔が擦り付けられる。 背中に回された手はまだ熱い。 「甘えたくて堪んないのにできねえもん」 「抱きしめてるのに?」 「いつもの抱っこがいい。それかベッドで寝転んでの抱っこ」 「あぁ……そうですね」 壁に凭れ全身で遥さんを受け止めているけど、やっぱり家でのハグとは違う。 「で?モヤモヤは落ち着いたか?」 顔を上げた遥さんがニヤリと笑う。 「え、えっ」 「ここんとこずっと消化不良みたいな顔してたろ」 「あの、」 「眞人にヤキモチ焼いた?」 「…………」 答えない俺の頭をくしゃと撫でた手が頬を包む。 気付いてない気付かれてないと思っていたのに、この人は本当に人の心情に敏感だ。 「好きだって言われた」 「柏木にですか!」 「うん。でもその場で断った。俺にはお前だけが特別だから」 ヤバイ、泣きそうだ。 俺の知らないところでも俺を一番にしてくれる。 思い合ってれば当たり前のことなんだけど、それでも永遠に思われるほどの魅力が俺にあるとは思えない。 この人が、他にいくらでも、そして普通の恋愛もできるこの人が俺といてくれる奇跡。 毎日、一日一日が宝物だと思えるのは、この人だからだ。 「………泣くなよ」 「遥さん…好きです」 「知ってるよ。七年前からずっと、な」 「愛してます」 「それも……知ってるって、ばか」 遥さんの「ばか」も凄く好きです。 そう言うと、戻った顔をまた赤く染めて、遥さんがもう一度「ばーか」と言った。 「でもまあ、ゆで卵にヤキモチ焼かなくなった分成長したよな」 「いつまでそれ言うんですか」 ふはっといつもの笑い方で遥さんが笑う。 この笑顔を一番側で見ていたい。 だからこれからも俺はあなたの番犬のようにあなたに近づくヤツを片っ端から威嚇します。 頬を包んだ手に顔を寄せられチュッとキスをされる。 「お前が俺の俺のって言うの、好き」 「え、そうなんですか」 「開発……されちゃったからな」 痛いと襟足の髪を引っ張られるほど強く抱き締めた。 赤い耳に囁く。 「遥さんはこれからも俺のです」 「当たり前だろ、ばーか」 「…はい」 ケツポケに入れた携帯が震えている。 たぶん「いつまで掃除してんの!?」と響子さんからじゃないかと予想しつつ、二人で顔を見合わせて笑う。 切れた電話がもう一度鳴るまではもう少しこのままで。

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