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※実践。

最近会社の飲み会が嫌いになってきた。 柏木の遥さんを見る目が気になる。 なのに、遥さんはいつものように楽しそうに酔っ払い、可愛い姿を見せる。 好きだと言われ、断った。 それで終わりなら恋愛なんて実に簡単だ。 そうはいかないから苦しいし、切ないし、もどかしくて、縋りつく。 柏木は諦めてない。 柏木が居づらくならないように、と遥さんが柏木を気遣う優しさはあいつにとって都合のいい優しさなのでは。 もんもんとしながら飲む酒はたいして美味しくもない。 ちびちびとハイボールを飲む俺の横にいた遥さんの身体がぐらりと揺れたと思ったら俺の膝に倒れてきた。 「遥さん、大丈夫ですか?」 「ん〜〜〜………」 遥さんの人差し指がちょいちょいと動き、俺を呼ぶ。 「トイレですか?」 「んーん…」 「吐きそう?」 「ゆーじ…」 「はい?」 「………たぃ」 「え?」 聞こえなくて覆いかぶさるようにしながら寄せた俺の耳に、今度ははっきりと聞こえた。 「今、すげーしたい」 「な、にを…」 「お前も俺も好きなやつ」 耳が赤いのは酔っているから? それとも……… 「遥さん、ちゃんと言って?」 膝の上で自分の腕に隠れるようにしていた遥さんがちらっと目を見せる。 「帰ってセックスしたい……」 酔っ払ったこの人は、実に誘い上手だ。

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