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後悔しない恋。

ふと触れられそうなほど距離を近くしてくれる。 歩みよって、寄り添ってくれる。 身体だけじゃなく、気持ちまで。 どんどん気になり、目で追ってしまうようになるまでそれほど時間はかからなかったように思う。 目で追うのに、目が合うことはない。 それに気付いた時、外されることのないあの指輪の相手は侑司さんなんじゃないかと思った。 遥さんの視線の先にはいつも侑司さんがいた。 結婚しているとは言わなかった。 パートナーがいる、と耳を赤くしながら答えた遥さん。 同性同士なんて、長続きするわけがない。 特定の相手を作らないヤツも多い。 現に俺もそうだ。 恋だの愛だの、相手を思う振りして縛ったり縛られたり。 その時の欲を気持ち良く解消出来ればそれでいい。 永遠なんて……あり得ない。 そう思うのに、そう思ってきたのに、それなら何故あの人はあんなにも眩しいのか。 パートナーがいても一晩欲を発散する相手にはなってくれるかも。 これまでの俺ならとっくに誘っていたはず。 軽い誘い文句を口に出来ないまま、それでも遥さんを目で追う日々は続いた。

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