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後悔しない恋。

遥さんと二人きりになることはあからさまになかった。 二人きりになれそうな時に限って外回りに連れ出されたり、買い出しを頼まれたり。 その日も遥さんと俺、そして真由さんが事務所にいた。 引っ越しの準備で皆が慌ただしく動く中、まだ出来る仕事がほぼない俺は片付け専門。 黙々とそれぞれが作業を続けていると、真由さんの携帯音が鳴り響いた。 「え?なんでそんなの忘れたの?あー、わかった、行くから」 電話を終えた真由さんが立ち上がり、ドアに向かう。 「社長の忘れ物を届けに行ってきます」 事務所の時計を見上げてから、遥さんと俺に視線を寄越す。 「就業時間が来たら上がって下さい。たぶんそれまでに戻って来られないので…遥さん、大丈夫ですか?」 真由さんにも気付かれている。 その時、気付いた。 当の遥さんは首を傾げながら呑気にうん、と頷く。

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